女性も要注意
10年来の温水洗浄便座の愛用者が、重度の皮膚炎を繰り返し発症しているケースもある。当事者の加藤守さん(55歳・仮名)が苦悩を打ち明ける。
「痔の手術を受けたことをきっかけに、自宅のトイレを工事して温水洗浄便座へと替えたのです。トイレットペーパーが痔に擦れて痛い思いをしなくて済むので、当初は喜んで使っていました」
だが、その喜びもつかの間。半年ほど経ったのち、加藤さんを悲劇が襲ったのだった。
「しばらく使用を続けると、肛門の周りに痒さを感じるようになったのです。放置しておくと、仕事中でもムズムズして落ち着かない。
その反動で大小を問わず、用を足すたび温水洗浄機能を使い、肛門に2分以上お湯を当てて痒さを紛らわすようになりました。
しかし、これがさらに症状を悪化させました。すぐにヒリヒリとした痛みが出始めたのです。鏡で自分のお尻を確認したところ、肛門の周りが真っ赤に腫れていて目を疑いました」(加藤さん)
慌てて病院へ駆け込んだところ、医師からはお尻の傷口から「連鎖球菌」が入り込み、それが炎症を起こしたと診断された。連鎖球菌とは、猩紅熱や骨膜炎などを引き起こす細菌のことだ。
「連鎖球菌は、温水洗浄便座のお湯に混ざっていたのだろう、と聞かされました。さらに、お尻の洗いすぎによって肛門の周りの粘膜が傷つき、そこから菌が侵入することもあるんですよ、とも注意されてしまったのです。
しかし、お湯を肛門に当てること自体が癖になってしまっているため、炎症を薬で治めてはまた悪化させ、といういたちごっこの状態が続いています」(加藤さん)
加藤さんは今も移動中や勤務中に肛門をかきむしりたい衝動を抑えながら生活している。