「始めてすぐ、とんでもない世界に入ってしまったって思いました。それくらい靴作りは難しいんです。一番基礎になるのが女性のパンプスなんですけど、それを作れるようになったのが、始めて10カ月ほど経ったころでしたね」
人間の足の形は千差万別。硬い革を使って立体的な形を作るだけでも難しいのに、それを足にフィットさせるのは、熟練の技を必要とする。そうした難しい技術をひとつひとつ習得していく中でも、優一さんは「自分のテイスト」を探し求めていたという。

「靴作りには、基礎となる作り方がいくつかあって、細かい形はそこから枝分かれしていくんです。一応ひと通りの技法を学びつつ、『俺のテイストはこれだ』っていう縫い方を決めて、それを極めようと思ってたんです。
試行錯誤していくうちに、『これだ』っていう縫い方が見つかりました。
『ノルベジェーゼ』っていう、もともと雪靴の縫い方なんですけど、手作りでしか作れない革靴で、めちゃくちゃ格好いいんです。これを極めようと必死で練習しました」
イタリアで約3年ほど修行した後、優一さんは日本に帰国する。自分で作ったトートバッグを販売したお金で、工房の機械を買い揃えていったという。