「ペットで癒されたい」の先にある「ゆるい虐待」

長年、ペットや動物を取り巻く現状を見続けてきて、杉本さんが痛感していることがあるという。それは、日本人の動物に対する意識についてだ。

「動物が好きで、可愛がりたい、という“愛護”の人間目線に関しては、私たち日本人はとても豊かにあると思います。ただ、“福祉”という観点から動物の立場に立って、動物の本当の幸せとは何か、と考えてみることにはいまいち目線が弱いのではないかと思うのです。

もちろん、人間は動物を管理する立場ですが、そうであっても福祉というものはすごく重要視されなければいけないものであり、その部分の意識が少し足りないのではないかと。そんなところが気になりますね」(杉本さん)

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虐待され、辛い思いをする動物たちを一匹ずつでも減らしていくためには、私たちの社会が正しく厳しい目を持って、感じたことはきちんと伝えていくということが大切で、それを積み重ねていくことしかない、と杉本さんは思いをかみしめる。

一時の「かわいい」だけを求めて、高齢のペットを虐待するケースも。問題は私たち人間側にある。写真はイメージです。photo/Getty Images

大切なことは、私たち一人ひとりがきちんと心の中に充実感を持って、幸せに生きていくこと。そこをしっかり考えなければいけないと思うのです。結局、人が幸せじゃないところで動物たちは虐待され、苦しみます。物欲など物質的なことや、名誉欲や、自己承認欲や、そんなことを求めるのではなく、自分の心を満たす真の幸せとは何か、それをみつけることが人生のテーマだと思います。それに気づけた人はきっと幸せなはずです。

今のような社会の仕組みやコロナ禍で経済が圧迫されている中で、生きていくというのはとても大変なことだと思います。ですが、そこに翻弄されるのではなく、しっかり自分の中に幸せの軸みたいなものを持っていると強いのではないかと思います。強い人は、たとえいろんな大変なことに見舞われたとしても、それに心を乱されて間違いを犯してしまったり、道を誤ってしまうことはないはずです。 何が起こっても自分の心が真の幸せを知っていれば、生き方がブレないし、きっと周りの人を幸せにすることもできると思うのです。

動物愛護の話と関係ないと思うかもしれませんが、実は繋がっている。ここがしっかりしていないと、動物虐待はいつまでも終わらない。本当に改めて、自分の幸せについて、きちんともう一度、自分に問わなければいけない時代なのではないかと、最近、より強く感じています」(杉本さん)

そう考えてみると、「コロナ禍で寂しくて辛いから動物を飼おう」「ペットを飼って癒されたい」と考えるのは違うということがわかってくる。

「なんなんでしょうね。動物も含めて何かで自分を満たそうとか、満たしてもらおうとか……。そうではなくて、自分が何かに貢献しよう、自分が何かを与えよう、という気持ちのほうが、本当はすごく人が幸せになれることなのではないかと、私は思います」(杉本さん)

自分が幸せであれば、「癒されたい」ではなく、動物に対して何をしてあげれば彼らが幸せになれるのか、と考えるはず、と杉本さん。写真はイメージです。photo/Getty Images