「どこのどいつだ~い?」
「あたしだよ~っ」「にしおかぁ~すみこだよっ」
SMの女王様スタイルで行う漫談で人気を博したにしおかすみこさん。

「うちは、
母、80歳、認知症。
姉、47歳、ダウン症。
父、81歳、酔っ払い。
ついでに私は元SMの一発屋の女芸人。46歳。独身、行き遅れ。
全員ポンコツである」

こんな書き出しで2021年9月から始まった連載「ポンコツ一家」(毎月20日更新)では、2020年夏、母親が認知症らしいということに直面したときから、認知症の母や家族と暮らす実体験をユーモアをたっぷり交えて伝えている。愛を持って自身の家族を「ポンコツ一家」と呼んでいるのだ。
連載第1回から大きな反響を呼び、「他人事ではない」「壮絶なのに爆笑」「ひとりで介護しないで!」と多くのコメントも寄せられている。

前回の連載では、自治体から介護のサポートを受けるためにも、病院へ認知症の診断を受けに行ったエピソードをお伝えした。第4回はにしおかさんが驚きの疑惑をかけられたときのことをお送りする。

女王様スタイル時代のにしおかさん 写真提供/にしおかすみこ
にしおかすみこさん連載「ポンコツ一家」今までの連載はこちら
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ある朝…

1年前の10月。
朝っぱら母の電話している声で目を覚ます。
そうだ。実家だった。もう戻って数ヵ月経つというのに、まだ時々こんな風に思う。

「そうなのよ。言っても聞かないの! 麻薬よ! やってるのよ! シーッ! お願い! ここだけの話しにして!」と声をひそめる。ヒソヒソとした空気を含むだけでボリュームは大きい。
「それだけじゃないの! 部屋に引きこもって祈ってるのよ。あれは絶対いかがわしい宗教!どうしたらいいか……」

誰と……電話しているんだ。
頭の横ら辺の携帯を手で探り時間を確認する。7時05分……にする会話か。
本気で言っているのか……。

「そう! まだ独身。46か7か8か9歳。そうなのよ、よく知ってるわねえ、その昔ね! SMだった! あと麻薬!」

あとじゃねえ。
居間にデタラメなタレコミ屋がいる。

母は昔から火のないところに煙をおこす天才だ。そこに認知症がのっかってくるようだ。
無敵だ。ないとは思うが万が一噂になって、ネットに上がったりしたら……私、全然人気はないけど、一応人気商売なんだよ……もう後回しだ。まだ寝ていたい。布団を頭までかぶる。ウトウトする……。

「ちょっと起きなさい!」

ベッドの私の枕元に母が立っている。びっくりして「ダ!」と変な濁音が出る。そこは死んでから立つポジションだろう……怖いよ。上半身を起こし携帯を触る。7時半過ぎ。

「ママにも覚悟があるから。出しなさい! 薬と注射器! 親だけど、親だから、あんたを今から警察に突き出すから。いつから自分のケツが拭けない人間になった! 拭けないなら一緒に拭いてやるから支度しなさい! 情けない!」

と言い放った母の唇が食い縛れば縛るほどワナワナと小刻みに震えている。
……わかったから、その無償の愛をそっと懐に戻しなさい。
冤罪にもほどがある。