2021.12.20
# 中国

ペットが誘拐され食べられた…規制ができても止まらない、中国「犬食」の現実

まさに、新旧中国の交差点だ
高口 康太 プロフィール

結局、農家が庭先で育てるほうが低コストなため、大型養豚企業がなかなか育たないという構図だ。犬肉についても事情はさほど違いはないのではないか。

それでも豚肉は主要な食肉として解体処理や流通には規制が強いが、犬肉にはルーズだ。農家がばらばらに小規模で育てており、もともと出所がわかりづらい仕組みのため、犬泥棒をして流通させても足が付きにくそうだ。

冒頭で取りあげた初七のように、盗んだ犬を露店で売るというゲリラ的商売にいたっては、取り締まりようがない状況ではないか。

犬肉食は規制されたが…

さて、ここまで犬肉食から見える、古い中国と新しい中国の交差点、ペットをめぐる観念の変化と犬泥棒について紹介してきた。問題はどれだけ急成長を続けてもまとわりつづける古い中国が、公衆衛生の危機をももたらしている点にある。

新型コロナウイルスがどこでどのように発生したのかはいまだに明らかになっていない。有力な仮説はコウモリが持っていたウイルスが、中間宿主のセンザンコウに広がり、人間に伝染したという経路である。つまり、2000年代前半に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)と同様のルートで広がったという説だ。

センザンコウ[photo by iStock]
 

SARSは中国社会を大混乱に陥れた。中国政府は再発を防ぐため、野生動物の市場での販売や養殖を規制する方針を打ち出したが、気づけばいつのまにか規制はゆるみ、もとの木阿弥に。

犬肉や野生動物を食べる風習は「野味」(やみ)と言われる。普段からよく食べるというわけではなく、一度も食べたことがない人も多いが、一定の支持を得続けており、消える様子はない。新型コロナウイルスの流行で「さすがにこれはまずい」と考えた中国政府は2020年4月、「史上最強の野味規制」と呼ばれる、野生動物養殖制限令を打ち出した。

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