2021.12.19

なぜ「ミニマリズム」が巨大なブームを巻き起こしたのか? その根本的な理由

それは「自己啓発」にまでなった

ある時期から急に耳にする機会が増えた「ミニマリズム」という生き方。なぜ一大ブームとなったのか、『裏道を行け ディストピア社会をHACKする』(講談社現代新書)を上梓した作家の橘玲氏が解説する。

 

「寝そべり族」はなぜ生まれたか

「寝そべっているのはいいことだ、寝そべっているのは素晴らしい、寝そべるのは正しい、寝そべっていれば倒れることもない」

2021年6月、中国でジャン・シンミンという36歳の男性がソファに寝転び、ギターを爪弾きながら歌う動画が削除された*1。

それに先立つ同年4月、大手ポータルサイトの掲示板に「食事は1日2回でいいし、働くのは1年に1~2ヵ月でいい」「“寝そべり”はまさに賢者の運動。“寝そべり”だけが万物の尺度だ」とする「“寝そべり”は正義だ」という文章がアップされ、SNSを通じて急速に広がった。彼らは“躺平族(寝そべり族)”と呼ばれる。

この風潮に対して中国国防省の報道官は、「この激動の時代に寝そべりながら成功を待つなどあり得ない。必死の努力にこそ栄光がある。若者たちよ、奮起せよ」と発破をかけた。習近平政権による民間学習塾規制、未成年のオンラインゲームの週3時間制限、アイドル推し(ファン活動)への規制なども、出生率を上げ、中国共産党を支持する「健全」な若者を育て、活気ある社会を維持することが目的とされている。

中国で「寝そべり族」が増殖する背景には、1990年代から30年にわたって続いた高度経済成長が市場の成熟とともに減速し、「頑張って働けば報われる」という親世代のような夢を若者たちがもてなくなったことがある。

21世紀に入ると、日本の「草食系」や韓国の「ヘル(地獄のような)朝鮮」など、先進諸国で「自分たちは親世代よりゆたかになれない」というあきらめが拡がった。それがいよいよ中国にまで波及したのだ。

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