2021.12.15

「ふつうに生きる」のが“無理ゲー”な社会で「極端な成功をした人」がやっていること

裏道を行け ディストピア社会をHACKする』(講談社現代新書)を上梓した作家の橘玲氏。勝ち組と負け組が二極化し、「ふつうに生きる」ことが困難になった時代において、「HACK」という概念が注目される理由を考えます(本記事は同書の一部を編集したものです)。

 

現実は攻略不可能な「無理ゲー」

ネットフリックス史上最大のヒットとなった韓国ドラマ『イカゲーム』はいわゆるデスゲームで、参加者は人生を逆転する賞金を求めて、“だるまさんが転んだ”や綱引きなど子どもの頃の遊びで勝負する。

ゲームの参加者は456人で、主人公のソン・ギフンは456番目。1人が死ぬと1億ウォン(約1000万円)が積み立てられ、45億円相当の賞金を目指して6つのゲームに挑む。
ギフンは賞金で母親の病気を治療し、再婚してアメリカに移住する元妻から娘を取り戻そうとしている。

それ以外の参加者も、先物取引の多額の損失を隠蔽して逮捕状が出ていたり、ヤクザ組織の金に手をつけて追われていたり、幼い弟のために北朝鮮から母親を連れ戻そうとしているなど、なんとしてでもカネを手に入れなくてはならない切羽詰まった事情があった。

物語が進むうちに、元医師の参加者が事前にゲームの情報を得ていることがわかる。スタッフ(〇△□の黒マスクが階級を表わす)がゲームの落後者の臓器を医師に摘出させて小遣い稼ぎをしており、そのために医師に死なれては都合が悪かったのだ。

ゲームの運営を任された鉄仮面の男(フロントマン)はこの不正に気づいて、「死体から臓器を取り出して売ろうが食おうが興味ないが、最も大事なものを奪ったことは許せない」と首謀者に告げる。それは“平等”だ。

ゲームでは皆が平等なのだ
参加者全員が同じ条件のもとで競う
不平等と差別に苦しんできた人々に
公平に競える最後のチャンスを与えるのだ
その原則をお前たちが破った

こうして裏切者は処刑されるのだが、このドラマが世界じゅうの視聴者のこころをとらえた理由がこの言葉に凝縮されている。

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