2021.12.15

「リベラル化」「知識社会化」した世界は、なぜ「ふつうの人」にとって生きづらいのか?

裏道を行け ディストピア社会をHACKする』(講談社現代新書)を上梓した作家の橘玲氏。勝ち組と負け組が二極化し、「ふつうに生きる」ことが困難になった時代において、「HACK」という概念が注目される理由を考えます(本記事は同書の一部を編集したものです)。

【前編】「「ふつうに生きる」のが“無理ゲー”な社会で「極端な成功をした人」がやっていること

世界で起きている変化

世界はいま、知識社会化、グローバル化、リベラル化という三位一体の巨大な潮流のなかにある。この人類史的な出来事によって社会はとてつもなく複雑になり、ひとびとは急激な変化に翻弄され、人生の「攻略」が難しくなっている。──これを私は「無理ゲー社会」と呼んでいる。

わたしたちは一人ひとり異なる個性があり、多様な能力をもっているが、能力のなかには、知識社会に適したものと、そうでないものがある。この能力やパーソナリティのばらつきが、失業や依存症、貧困・犯罪などさまざまな社会問題の原因になっている。

知識社会の高度化というのは、端的にいえば、仕事に要求される知的スペック(学歴・資格・知能など)が上がることだ。ハードルが高くなれば、当然、それを超えられる者の数は少なくなる。

その結果、純化した知識(学歴)社会のアメリカでは、高卒や高校中退の白人労働者階級(ホワイト・ワーキングクラス)が仕事を失い、自尊心を奪われ、ドラッグ、アルコール、自殺で「絶望死」している。世界じゅうで平均寿命が延びているときに(コロナ前)、アメリカでは低学歴の白人の平均寿命が短くなるという驚くべき事態が起きていた。その怒りが、「右派ポピュリズム」となってトランプ現象を生み出したのだ*3。

関連記事