「結婚以来、一度も一緒に暮らしたことがないまま、離婚してしまいました。結局、私たち家族になれなかったんです」と、今井千寿子さん(仮名・42歳)。

千寿子さんは、10歳の娘を育てるシングルマザー。6年前、およそ4年間の別居婚生活にピリオドを打った。

「実家に甘えて子どもを囲い込み、元夫が『父親』になる機会を奪ってしまったのは、私の責任。でも、元夫もこちらに踏み込んで来なかった。だから、悪いのはお互い様かな……」

「里帰り出産」という言葉がある。出産前後に妻の実家に帰り、実の親にケアをしてもらえばリラックスできる環境で、生活の世話もしてもらえるのなら、安心して出産できるだろう。しかし海外では「里帰り出産」という概念がないという。子どもの誕生は夫婦のことで、夫と妻と二人が力を合わせ、出産のヘルプを頼むなら二人の家で誰かを頼むのが当然、という考え方なのだ。そうでなければ夫の「当事者意識」もなくなってしまうという意見もある。

そんな「里帰り」を機に離婚してしまったという今井千寿子さんは、出産のために里帰りをしたのではなく、切迫早産の影響で長く入院し、そのまま子どもと実家で暮らしていたという。どのような経緯で離婚に至ったのか。ライターの上條まゆみさんが話を聞いた。その前編では、同居0日の理由をお伝えする。
上條まゆみさん連載「子どものいる離婚」今までの記事はこちら
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結婚するつもりで芸能関係の仕事を辞めた

千寿子さんは高校を卒業してから、芸能関係の仕事をしていた。劇団に所属して芝居に出たり、いわゆる地下アイドルとして活動したりしていた。小柄で可愛らしい雰囲気の千寿子さんには一定のファンがついており、仕事はとても楽しかった。当時、付き合っていた人との間に子どもができ、結婚するつもりで芸能関係の仕事は辞めた。

芸能関係の仕事を熱心にしていた Photo by iStock

ところが、残念ながら子どもは流産してしまう。付き合っていた人とも、別れることになってしまった。当時、千寿子さん27歳。
「それ以来、子どもを産んでお母さんになる、というのが人生の目標になったんです」

熱を入れていた芸能関係の仕事にはまったく興味がなくなり、千寿子さんは「ふつうに結婚してふつうのお母さんになる」ために、ふつうの仕事に就くことに。通信販売会社のコールセンターの職を見つけて、働き始めた。そこで出会ったのが、元夫だった。職場の先輩で、3つ年上。同僚として、すぐに仲よくなった。