2021.12.23
# ドラマ # エンタメ

『カムカムエヴリバディ』なぜ安子は突然悪者になったのか…年をまたがず「るい編」に突入した理由

木村 隆志 プロフィール

るいに「悲劇のヒロイン」魅力を注入

つい最近まで安子は純粋無垢な“いい子”として描かれてきた。それこそが朝ドラのヒロインらしいキャラクターであり、3人の主演女優をリレーする『カムカムエヴリバディ』の「1人目は王道の形から入った」と言っていいだろう。

だからこそ視聴者は安子に感情移入して見てきたが、制作サイドとしては“るい編”が近づくにつれて少しずつ、るいに感情移入してもらわなければいけない。つまり制作サイドが、“安子編”の終盤は安子からヒロインとしての魅力を減らし、るいに悲劇のヒロインとしての魅力を加えていたのだ。

安子が突然、選択を間違え続け、悪者のようになったのは、脚本上の緻密な計算によるものにほかならない。ただ、そんな悪印象は一時的なものに過ぎず、“るい編”の終盤へ近づくとともに消えていくものだろう。

“安子編”の最終週、視聴者の多くは「お母さん、どこにも行かないで」「私を一人にしないで」という、るいの切なる思いを共有しはじめていた。

もっと言えば、“安子編”の最終週は安子、仙吉、勇、算太、雪衣。誰も「るいの気持ちを理解しよう」としていない、かわいそうな状態が続いたことで視聴者の思い入れが加速していった。

 

振り返ると“安子編”は、「稔(松村北斗)との恋愛というほのぼのとしたムードから入り、戦争による悲しいシーンが続く」という流れ。対して“るい編”は、「悲しい状況からスタートし、ハートフルなシーンが増えていく」ことが予想されている。

るいは安子が勝手に決めた“娘の幸せ”、すなわち雉真家から飛び出すことを決意。大阪へ行き、自分の力で幸せを探そうとする。仕事に就き、恋や結婚・出産などを経験することで、るいは安子の気持ちを少しずつ理解できるようになり、わだかまりは消えていくのではないか。

もう1度話を安子に戻すと、彼女のキャラクターが純粋無垢ないい子から、選択を間違え続けるダメな子に変わったことは必ずしもネガティブとは限らない。「時に周りが見えなくなり、我を失ってしまう」「誤った方向を信じて進んでしまう」のも、むしろ人間くさく親近感のある主人公に見えるからだ。

朝ドラの主人公は「常に正しくあり続けなければいけない」というわけではなく、「ひたむきに生きる」。あるいは「挫折を乗り越えていく」という姿が見せられれば十分だろう。その意味で、視聴者のイメージが上がったあと下がり、また上がるであろう安子は、最終的に人間味あふれる主人公として視聴者の心に記憶されそうだ。

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