時事10月31日付を見てみよう。
〈 ウクライナ政府軍が10月下旬、東部の紛争地域で親ロシア派武装勢力への攻撃にトルコ製ドローン「バイラクタルTB2」を初めて使用したとする動画を公開した。欧米がウクライナに苦言を呈する中、ゼレンスキー大統領は29日、「領土と主権を守っている」と強気の声明を出した。〉
ドローンは、「戦争を一変させる兵器」といわれている。たとえば、2020年のアルメニア、アゼルバイジャン戦争では、アゼルバイジャン軍のドローン攻撃が大きな勝因となった。

プーチンは、ゼレンスキーが、事実上独立状態にあるドネツク、ルガンスクを攻撃し、再統一しようとしていると見た。それで、ウクライナ国境沿いに大軍を集結させたのだ。ウクライナ軍がドネツク、ルガンスクを大々的に攻撃すれば、ロシア軍が「親ロシア派」を守る、ということを示すために。
このことを、一般的に「ウクライナ侵攻」と呼ぶ(ルガンスク、ドネツクは、法的に現在もウクライナ領なので、「ウクライナ侵攻」という言葉は正しい)。
「ロシアの大軍集結」の短期的目的は、「ウクライナによるドネツク、ルガンスク攻撃を阻止すること」だが、中長期的には「ウクライナのNATO加盟を阻止するため」でもある。
どういうことか?
ウクライナ国境にロシアの大軍がいる。そうなるとウクライナは、ますます「NATOに加盟したい」と考えるだろう。
しかし、NATO加盟国で、なおかつロシアに近い欧州諸国はどうだろうか? ロシアの大軍を映像で見て、「ウクライナがNATOに加盟すれば、我々はロシアと戦争することになる」と恐怖するだろう。
つまり、「ロシアの大軍」を見せつけることで、欧州に「ウクライナをNATOに加盟させることのリスク」を再認識させ、加盟を拒否させる狙いがあるのだ。