生きづらい現代を象徴するヒロイン

そんな佐藤優樹は、今年の初め頃、不運にも「過敏性腸症候群」という病を患います。過敏性腸症候群は、腹痛、便秘、下痢、不安などの症状のために、日常生活に支障をきたす病気です。
ハロー!プロジェクトはコンサートや各種イベントでほぼ毎週ステージに立っている中、佐藤優樹にとってはほとんどの出演を欠席せざるをえず活動休止も余儀なくされた不甲斐ない1年となりました。

-AD-

無理せずしっかり休んで、またいつもの元気なまーちゃんとしてステージに帰って来て欲しい……そんなファンの願いも虚しく、彼女は半年ほどの葛藤の末、モーニング娘。およびハロー!プロジェクトからの卒業を決断。
「このまま先の予定を立てられない状況下でグループ活動を続けるのではなく、まずは症状の改善を第一に考え、グループでの活動に区切りをつける」という名目でした。
なによりも音楽が好きで、誰よりもつんく♂氏の楽曲を愛していたまーちゃんだからこそ、ファンが心待ちにするステージに穴を空けなければならない状況がいかにつらかったか、想像に難くありません。

振り返れば、佐藤優樹のこの10年間は、生きづらさとの葛藤の日々だったのではないかと僕は思います。

一説には、勉強が苦手だったために両親から芸能活動を勧められたんだとか。幼少期から、ピアノ、バレエ、乗馬など、様々な習い事に毎日通っており、友達と遊ぶ時間はほとんど無かったといいます。

モーニング娘。への加入後は、ダンスや歌詞が覚えられなかったり、シャイな性格でメンバーとコミュニケーションが上手くとれなかったりと、「問題児」として知られ、同時期に活動した先輩たちはかなり手を焼いたそう。
みんなに合わせて同じことをするのが苦手で、決められたルールに倣うのが苦手。きっと、学校のクラスの中にいたら周りに馴染めず浮いてしまうタイプだったのではないでしょうか。
また、クールなステージパフォーマンスとは裏腹に、素の彼女は天真爛漫そのもの。「天然ボケ」なんて域には収まらない、予測不可能な宇宙人キャラ。凡人には理解できない言語が繰り出されるトークも佐藤優樹を語る上で外せないポイントです。

出典/あはれ!名作君公式YouTube 
声優として出演中の『あはれ!名作くん』トーク映像

そんな意図せず集団からはみ出てしまう個性が、今やグループを牽引する才能として洗練され、佐藤優樹はハロー!プロジェクト内外から「天才」と称されるカリスマへと変貌。
時より理解に苦しむトークも「佐藤優樹という国の言語」だと思えば納得できてしまうから不思議です。

しかし、いくら天才と賞賛されようと決して驕ることなく、佐藤優樹は22歳になった今もシャイなまーちゃんのまま。
むしろ、彼女は「天才」とされる評価を快く思っておらず、他者と別格扱いされることに不安と恐怖を覚えるといいます。
天才であるがゆえの孤独。我々が天才と評しているからこそ、彼女は今でも集団から疎外される不安と恐怖に苛まれているのかもしれません。
葛藤から這い上がり、生きづらさを個性へと昇華した健気な姿が、ストレス社会に生きづらさを感じる多くの現代人の心を掴んでいるのではないでしょうか。