だからこそ、作れなくなった…
逆に言うと、いま作れなくなっている大きな理由もそれなわけです。映画会社もテレビ局も金がないし、キャスティングの力もないんですよ。
実は、「忠臣蔵」が作られなくなった大きな理由は、作る力がないからだということです。よく「忠誠心に基づく精神性がわかりにくくなっているからではないか」という説もありますが、解釈はいくらでもアレンジできるから、やろうと思えばやれるんですよ。
後で詳述しますが、(編集部注:『忠臣蔵入門』で詳述)実際にその時ごとに新解釈を入れて「忠臣蔵」の歴史は紡がれてきたのですから。ところが、現在はそもそも製作ができない。時代劇自体がほとんど作られなくなっているのですから、「忠臣蔵」はなおのことです。
「なぜ忠臣蔵は廃れたのか」「なぜ若い人は忠臣蔵を知らないのか」ネット上にはさまざまな言説が展開されていますが、実はシンプルな理由なのです。
作られなくなったから馴染みがなくなった。それだけのことです。
「忠臣蔵」の中身にその要因を求める言説は、私には違和感しかありません。そもそも新しく観る機会がないので、若い人たちはその内容に賛否の意見を持ちようがないのです。