『老後の資金』『キントリ』…作品により異なる役割

映画の舞台は北陸・富山県。毎年、シベリアから800羽を超える白鳥たちが飛来し、春が訪れると再び海を渡ってシベリアへ帰っていく。そんな中、澤江さんは、2018年の春に、たった1羽だけ取り残された白鳥のその後を、4年間にわたって見守り続けた。映画のキャッチコピーには、『翼の折れた白鳥と“おじさん”の奇跡の物語』とある。

「私自身、観る前と観た後では、自然に対する考え方が変わったというか、視界が開ける感じがありました。“こういう生き方があっていい”“こういう愛し方があっていい”と思いましたし、澤江さんも、“どこまでが人間の関わっていいことか”“どこからが自然に委ねるべきことか”の線引きをちゃんとなさっている。野生動物と多少なりとも触れ合って、それを映像に撮っていることなどに賛否はあるかもしれませんが、少なくとも私は、この映画に関わったおかげで、野生動物が自然界で生きていくことの厳しさを更に知ることができましたし、自然と人間の関わりはどうあるべきかなど、自分の中でしっかり考えていかなければならないテーマに関しても、課題をいただきました」

(c)2021映画『私は白鳥』製作委員会
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長編映画のナレーションは初ということで、「心がけたことは何ですか?」と聞くと、「常に優先させていることは作品が良くなること」「作品の中で自分が担うべきポジションを見極めることです」という答えが返ってきた。

「私たちの仕事が果たさなければならない役割は、観てくださる人に“伝える”ことだと思っています。伝えるものが情報なのか感情なのかテーマなのかは作品によって違いますが、映画もドラマもチーム戦なので、作品が良くなることが一番大事。私が目立つとか、魅力的に見えることはどうでもいいことです

ただ、作品の中で、自分が担わなければいけないポジションは毎回違うので、たとえば『老後の資金がありません!』なら私は振り回される役。進んでやっているように見えて実は受け身なんです。対して、『緊急取調室』は、受けの場面もあるけれど、基本は自分から押していく。シーンによっても変わります。その塩梅を見極めていくことが私の役割かな、と。今回は、白鳥と澤江さんと富山の景色が素晴らしいので、言葉が邪魔になってはいけないでしょう? どういうテンションで、どういうトーンで入っていったらいいのか。自然に言葉が耳に入ってくるそのニュアンスを、監督と相談しながら探っていった感じです」

撮影/山本倫子