卒業後の成長に期待

『二月の勝者』の物語では、家庭でパーティーをしたことがない子が、無料塾のクリスマス会でホールケーキやチキンの丸焼きを見て驚き、切り分けを体験する。通常の家庭では当たり前のことでも、その一つ一つが学習だ。

筆者が取材した困窮家庭の小学生の居場所では、おかずの食べ方がわからない子や、多子世帯のヤングケアラーがいて、スタッフが生活の基本を教え、学習を支援し、親のケアもしている。つばめ塾は中学生がメインで、目に見えて困った子が、がらりと変わる場所ではないけれど、小宮さんは、無料塾を卒業した後の子供たちに、期待している。

「高校に進んで、無料塾でコツコツ頑張った経験が生きるのが楽しみです。中学のころは5段階で1~2の評価だった成績が、上がる。仮に底辺と言われる高校に入ったとしても、勉強した成果が、現れます。学力は、間違いなくついて、できることが増えるんです。無料塾に通う時間は、目に見えない大事な土台を作ります。

無料塾で1週間に2時間、勉強するだけの子は、『二月の勝者』みたいに受験塾で毎日、勉強している子と競争するのは不利です。でも、ここで一生懸命やったことで、自信がつき、高校に入ってから花が咲いて、やってよかったと思える日が来ます

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小宮さんは、『二月の勝者』のドラマを家族と見て、盛り上がっているという。

「黒木先生の無料塾が出てきて、社長の岸部一徳さんが『お菓子を持っていってあげて』と言う場面がありました。無料塾が温かい場として描かれていることに、妻は感動して大泣きしました。つばめ塾には口も出さずクールですが、繰り返し見て、泣いていました。

ドラマに出ていた無料塾は、理想形ですね。拠点があり、常に出入りできるので。私も中3の息子がいて、受験生の親を経験しています。息子は、つばめ塾に通っていて、父の仕事を理解しているようです。夕方、家にいると、今日は塾に行かないの? と聞いてきますよ」

◇後編では、無料塾の広がりやボランティアの先生のやりがい、コロナ禍の試行錯誤を紹介し、「中学受験をする子」と「ご飯を満足に食べられない子」の差をなくすにはどうしたらいいか、考える。

なぜ勉強するのか。競争のため、良い学校に入るための前に、自分でできることを増やすため、自信をつけるため。お金がなければ勉強できない、のループを断ち切る思いで小宮さんたちは動いている Photo by iStock