大学の学費を祖父母に出してもらい…

小宮さんの場合、公的な支援は受けずに、無料塾を運営しているという。

「映像制作の会社は、正社員でしたが、無料塾を始めて辞めました。今は高校の非常勤講師や、医療機関でのアルバイト、NPO理事としての収入を合わせて、家族5人で何とか生活しています。収入は3分の2に減りました。妻も働いて、応援してくれます。

無料塾の立ち上げの1年間は、家庭教師に弁当店、予備校など、もっとアルバイトを掛け持ちしていました。後は、個人の善意の寄付に支えられています。行政から補助金はもらっていません。月に500円を出してくれるおばあちゃんもいれば、月に10万円も寄付してくれる社長さんもいて、今では年間900万円ほどの寄付があります。

それを、公民館の利用料や生徒の奨学金、人件費、通信費、消耗品、光熱費、卒業遠足費などにあてます。寄付金は、9年間続けた成果で、これだけ集まっています。奨学金など、学習支援以外の分野を拡張しているから、900万円かかっていますが、学習支援だけなら費用はそれほどかかりません」

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3人の子の父でもある小宮さん。生活は、楽ではないという。なぜ、それほど頑張れるのか。

「私自身が、貧困家庭に育ったんです。父の年収は平均すると150万円ぐらいでした。貧しくても明るい家庭で、父は少年野球のコーチを25年、務めました。お金に執着しない父が、家庭は貧しいのに、野球団の子供にはプレゼントをしたり、アイスを買ってあげたりするのを見て、しょうがないなと思いました。もしお金にがめつい家庭だったら、私は無料塾をやらなかったと思います。

高校では奨学金を借りましたが、大学進学を反対されました。大学は、祖父母が学費を出してくれて、卒業することができました。 とてもありがたく、ラッキーだったんだと、無料塾の活動をする中で実感しました。その学費を、出してもらえない子もいるんです。自分が恵まれていたから、無料塾で返したいと思いました。夏休みに合宿をやっていた時は、無料で食事も出して、妻にはあきれられました。私が貧困家庭出身なので、お金がかかることはここで全部、してあげたいと思ってしまいます」

「恵まれているから」ということも考えず、当然のように塾に行き、大学に進学する人は多いだろう。恵まれていたから大学を卒業できた、だから無料塾で返したい。小宮さんはいう Photo by iStock