日本テレビ系で毎週土曜日に放送中の中学受験ドラマ『二月の勝者―絶対合格の教室―』(22時~)。最強最悪のスーパー塾講師・黒木蔵人を演じる柳楽優弥さんのインタビューを公開したところ、反響をいただいた。「課金ゲーム」「大学系列校」「鉄道オタク」「帰国生」「御三家」「学校の選択肢」「塾の合格実績」……。原作漫画やドラマに登場するエピソードを、リアルに体験した家庭に取材し、紹介してきた。

「親はスポンサー」と公言し、営業に励む塾の校長である黒木先生が、実は困窮家庭のために力を尽くしている。ドラマや原作漫画でその秘密が明らかになり、リアルに「無料塾」を開く先生たちから、喜びの声が上がっている。東京の無料塾「八王子つばめ塾」理事長の小宮位之さん(43)は、自身も貧困家庭で育った。無料塾の運営は個人からの寄付金でまかない、アルバイトを掛け持ちして生計を立てる。リアルな無料塾は、どんな役割があるのか。前編は、つばめ塾の始まりの物語を紹介する。

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東日本大震災きっかけに

認定NPO法人「八王子つばめ塾」は、小宮位之さんが2012年に開いた無料塾だ。

中学生を中心に、30人ほどが通う。コロナ前は、70人ほどいたが、緊急事態宣言により、借りられる施設が減ってしまい、増やせない状況だという。平日の夜は7時から9時、土日は3時から5時で、それぞれの子が週2回。数学と英語を中心に勉強し、都立高の受験を目指す。

小宮さんは9年間で、250人以上の子に教えてきた。教える側の希望者も多く、200人以上のボランティアの先生が関わった。 今は40人ほどが無償で、交通費も自腹で通う。大学生が4割ぐらいで、会社帰りに寄る社会人もいる。

八王子つばめ塾の勉強風景 写真提供/八王子つばめ塾

「2011年に、東日本大震災の被災地に行ったことが、きっかけになりました。無料塾を始める前は、映像の制作をする会社に勤めて、ビデオカメラマンとして海外にも行きました。震災後に仙台市の現場に入って、ドキュメンタリー制作のため1週間ほど撮影しました。その時、自分には一体、何ができるんだろうと考えました。

安定した給料をもらわなくてもいい――。教師の仕事をした経験もあり、学習支援のボランティアをやりたいと思いました。でも、当時は無料塾という言葉がなくて、インターネットで検索しても見つからなかったんです。ある時、たまたま無料塾をしている団体のサイトを見つけ、これだ! と雷に打たれたような感激がありました。

ちょうど、義母の持つビルから大学寮が撤退し、シェアハウスにすることになりました。部屋を眺めると、机も椅子もホワイトボードもある。震災後に何かしたいという気持ちと、無料塾が結びつき、一室を借りて2012年に無料塾を始めることにしました」

八王子つばめ塾を小宮位之さん 写真提供/八王子つばめ塾

ホームページを作り、呼びかけたが、なかなか生徒が増えなかった。知人の協力で、市の校長会でPRする機会をもらい、ある校長が全校生徒に無料塾のチラシを配ってくれた。生徒が増え、ビルの一室だけでは狭くなり、公共施設や地域のサロン、お寺の施設を借りて八王子市内の4カ所に広がった。

「メディアの取材も来るようになりました。私は撮影していた側だから、どういう場面が求められるかわかって、対応できます。キー局の主要なニュース番組や、新聞で紹介されました。他は、生徒のお母さんたちが持つ、ネットワークの口コミで広まりました。何も情報がなかったら、無料なんて裏があるんじゃないかと疑ってしまい、入りにくいですよね。ここはいいわよ、と知り合いに聞いたら、安心して入れるようです」