2000年初頭、ソテジ人気で沸いたバンドブーム

「私たちは30代ですが、韓国を代表するバンドというと、1992年にデビューした3人組のR&B・ヒップホップグループ『ソテジワアイドゥル』は絶対的な存在です。メンバーのソ・テジは、もともとメタルバンドをやっていました。それまで韓国になかった『ポップス』を始めたのがソ・テジでした。今のK-POP人気も彼がいなければ誕生しなかったと言われています」と話すのは、妻のJちゃんです。Jちゃんのほうがバンド系は詳しいので、今回サポートしてもらいながら話を進めていきたいと思います。

ソ・テジは、韓国では「伝説的な存在」「今の韓国の音楽業界の基盤を作った人」という認識です。ソテジワアイドゥルのメンバーの一人だったヤン・ヒョンソクは、1996年に「YGエンターテインメント」を創業。BIGBANGやBLACKPINKの所属事務所でもあります。

2014年、9作目アルバム『QuietNight』の制作発表時のソ・テジ。最近は主だった活動はしていない。photo/Getty Images
1992年に国民的大ヒットとなったソ・テジワアイドゥルの『I Know』。Youtube(MBCfestival)

BTSもソ・テジをリスペクトしていて、2017年7月ソ・テジデビュー25周年を記念して、BTSが彼の『Come Back Home』をリメイクし公開をしています。

BTS「Come Back Home 」Stone Music Entertainment/YouTube

韓国にはバンドが少ないと認識している方もいると思いますが、2000年初頭までは、韓国にも結構な数のバンドがいました。それこそソ・テジに影響されて始めた人も多かった。さらに、ちょうどその頃ヘヴィメタルバンドの 『Metallica(メタリカ)』やメタルラップの『Limp Bizkit(リンプ・ビズキット)』といったバンドが相次いで来韓公演をして、バンド系ジャンルが韓国で人気を得ていたんです。メジャーデビューしていないインディーズバンドも、普通にテレビの音楽番組で観ることができた時代でした。

また欧米だけでなく、日本のバンドを聴いている人も多かったですね。Jちゃんも日本のバンド系のファンですよね。

「韓国の音楽以外に洋楽、日本のロックバンドが好きでよく聞いていました。特に好きだったのはX-JAPANのHIDEで、他にDIR EN GREY、L'Arc~en~Cie、GLAYにハマっていました。2000年代の初め頃までは、よくライブにも行っていましたよ。私のような人は結構いました」(Jちゃん)

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韓国のバンドブームに水を差した「カウチ事件」

そんなバンドブームに水を差したのが、当時「弘大で一番人気」と言われたインディーズ系バンド『カウチ』です。

2005年の夏、彼らは地上放送の人気音楽番組の生放送中に服を脱ぎ、下半身を露出するという事件を起こしました。私も当時、その番組を家族といっしょに観ていましたが、下半身丸見えのままピョンピョン飛び跳ねる姿に目を疑いましたよ(笑)。彼らはその夜に逮捕されました。

小さな子どもも観ている番組で社会問題になり、番組も打ち切りになりました。そのとき、「やっぱりちゃんとした事務所、レコード会社に所属していないバンドはダメだ」ということになり、それ以降、インディーズバンドの地上波出演は全面禁止。バンドに投資する企業もなくなり、あっという間にバンドブームは衰退しました。

「私は当時、キム・サランというロック系ミュージシャンのファンでした。彼は自分で作詞作曲する才能豊かなシンガーソングライターなんですね。18歳で高校中退してデビューし、1999年に最初のアルバムを出したときにすごく話題になりました。ところが、その後は時代に合わずバンドブームも終わり、どんどんテレビに出られなくなってしまって……。

先日、久しぶりにキム・サランのYouTubeを見てみたら、コメント欄に『彼は日本に生まれていたら、もっと成功できていただろうに』と書かれていたんです。それを読んだ時、『やっぱり、こう考える人がいるんだな』と思いました。日本にはたくさん売れているバンドがいて、才能を生かせる場があることを韓国人も知っています。残念ですが、韓国の現状ではそれはなかなか難しいのかもしれません」(Jちゃん)