型は重要ではないが、型を知ることで身につくこともある
――さそう先生の『マンガ脚本概論』では創作指南本がたくさん参照されていますが、どれがマンガに使いやすいセオリーで、どれは使いづらいみたいなものはありますか。
さそう 『マンガ脚本概論』もそうですが、だいたい創作指南本というのを読んでも読者がそれを実践するのは簡単ではないんです。僕は「型は重要ではない」という立場で、できるだけシンプルに学生に伝えようと思って「はじめてのおつかい」というモデルを示しましたが、『シナリオの基礎技術』(新井一・著)のように「起承承承承承転結」のような言い方のほうが伝わりやすい読者もいるでしょうね。型にあてはめて作品を重ねることによって、はじめて自分の描きたいテーマが見えてくる、ということはありますから。
――マンガづくりに関する理屈を考え、学生に教えることで先生自身の作品づくりは変わりましたか?
さそう 変わりましたね。言語化することで改めていろいろなポイントを意識するようになりましたし、自分ができていなかったことにも気がつくようになりました。今までは「テーマがしっかりした作品をつくることで結果として売れればよい」と思っていたのですが、こうすればもっと売れるんじゃないか、という考えをベースにおいても、いいテーマで作品はつくれるはず、と思えるようになりました。60歳になって今さらですが(笑)、これからは自分の売り上げを更新するマンガを描いて理論を実証していきたいと思います。