2021.12.18
# エンタメ

映画や小説と何が違う? マンガの「ストーリーの作り方」

さそうあきらが語るマンガ脚本の理論
飯田 一史 プロフィール

テーマとは結局なんなのか?

――マンガだと連載ものが大半で、一話ごとにまとまりが必要でありながらストーリーや舞台が続いてひと連なりになりますよね。映画は『スター・ウォーズ』やMCUみたいな続きものもあるにはありますが、基本的には一本で完結したひとまとまりの作品として成立するものです。マンガ連載では一話ごとのまとまりや盛り上がりと、作品全体としてのまとまりや盛り上がりをどう設計していますか?

さそう 僕が意識しているのは、読者にとって新しい情報を提供するということ、そして毎話毎話に「今回はこれを見せる」という小さな山は必要です。それは多分「問題を維持する」ためのハードルに該当すると思います。

一方で、最近アメリカのドラマなんかだと「問題を維持しさえすればいいだろう」みたいな、引きに引きを重ねて「どうなるんだ?」とハラハラさせるんだけど、最後まで観ると「なんだ、こんなオチか」くらいの作品もある。だから「問題の維持さえすればなんでもいいわけではない」ということで「テーマ」が大事だと言っています。

[PHOTO]iStock

――「テーマとは何か?」についてさそう先生は、究極言うと「宇宙ってなんだ?」(人間以外に関する命題)と「人間ってなんだ?」(人間に関する命題)の2つにつながる疑問(問いかけのかたちをしたもの)である、と整理しています。たとえばある社会問題を扱った作品で、経済重視の推進派が勝つのか自然重視の否定派が勝つのか、みたいな話だとして、ストーリーを牽引する「どっちが勝つんだ?」といった「問題」も読者に対する問いかけだけれども、それを抽象化して「人間が生きていくうえで重要なものは何か」みたいな別の言い方をした問いかけがテーマだということですよね。そういう軸、争点がブレたまま終わると「推進派が勝ちました」「で?」となる。

さそう テーマについて考えると急に哲学の話みたいになって、学生の耳も素通りしそうになるんですね(笑)。ただ、読者への問いかけに作中で明確に白黒付けた回答を出さないといけないわけではなく、違うものの見方、新しい情報を提供できればいい。学生の作品では「なんとなくバッドエンドにしてみました」みたいなものが多いんです。そうすると「何が言いたいの?」となる。ただしバッドエンドでも、おもしろいと感じる場合にはテーマとなる読者への問いかけが浮かび上がっている。

僕の感覚では慣れてくるとストーリーを考えていくうちにわりと最初の段階でテーマがわかるし、テーマがある程度決まっていないとストーリーも進められない。ところがスティーブン・キングは「テーマに基づいたストーリーは駄作のレシピである」「作品を脱稿して6週間寝かせてからテーマのことを考える」と言っているんですが……。

 

――いつ考えるかという順番はともかく、キングも「テーマなんかまったく考えなくていい」とは思っていなくて、それを意識して改稿しているわけですよね。

さそう 最初からテーマがあるわけではなくて、描きたいものからスタートするのは誰でもそうだと思います。ただ描いているあいだにテーマのことをまったく考えないでも走りきれるのが、キングのようなストーリーテリングの天才なのかもしれない。

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