2021.12.18
# エンタメ

映画や小説と何が違う? マンガの「ストーリーの作り方」

さそうあきらが語るマンガ脚本の理論
飯田 一史 プロフィール

「問題の提起→維持→解決」というモデル

――ほかにマンガと映画や小説だとどういうところが作り手からすると違うと感じますか。

さそう やはり尺ですね。マンガと映画だと一本あたりの長さが違うし、小説はかなり自由に尺をコントロールできる点でマンガや長編映画と異なります。あとはマンガでは、バトルシーンやスポーツの試合を入れるとめちゃくちゃ尺を取る。そこは映画との違いです。映画なら1分で表現できることもマンガでは何十ページも描かないといけない。その時間感覚の違い、画面面積の違いは大きい。

ただ、ベースになる脚本に必要なことは、ジャンルを問わず応用できると思います。

多くの学生、新人マンガ家は「映画みたいな話が描きたい」と思っているふしがあるんですが、「それは勘違いだよ」と言っています。僕は映画『おくりびと』のコミカライズをしたことがありますが、それは単行本1冊に収まったけど300ページ近くかかったわけです。

ところがマンガの場合、新人はまず16ページなり40ページなりで完結する「読み切り」から勝負しないといけない。読み切りは軽視されがちで、雑誌の中でも枠は小さいし、ネットでも読み切りはたいてい新人の作品しか載らないから、短編の名作に触れる機会が少ないんですね。だから学生はどういう問題の立て方をして短編を描けばいいのかがわからない。

私が教えていた大学の課題では、最初は16ページくらいの短い作品を書くところから始めています。実は描きたいものを短く凝縮した方が、欲張ってあれこれやった長いものより良い作品が生まれやすい。でも学生は尺に収まらない大きい問題を描きたがる。だから「いやいや、あなたが描きたいものは小さい問題でも描けるんだよ、小さい問題を見つけてごらん」と伝えたいわけです。

[PHOTO]iStock
 

――「問題を提起して、維持して、終わりのほうにクライマックスがあって、解決すればいい」という物語の捉え方はシンプルだし、「維持」の部分を主人公が直面するハードルの数や高さで尺を調整すればいいので、実務的に使い勝手がよさそうですね。

さそう ストーリーの型を説明したモデルには色々ありますが、だいたいみんな起承転結なら「起」と「転」と「結」はわかるけど「承って何?」とか「三幕構成の第二幕って何?」と思うわけです。そこが一番長いのに、意外と納得感のある説明をする人がいない。だったら「『承』は『ハードル』だよ、ハードルの質と量が大事なんだよ」と説明したほうが学生にはわかりやすいだろうなと思いました。

――ほかにもジョーゼフ・キャンベルが提唱して『スター・ウォーズ』の脚本に応用されたと言われている「ヒーローズ・ジャーニー」のような考え方もありますが、ああいう明確に始まりがあって終わりがある物語の類型は連載マンガに応用するのが難しいのでは? と思っていました。マンガは人気が出たら普通は長く続けることになるし、尺の長さが見えない続きもののストーリーで、神話や物語の理論の流れに合わせて描いていくのって現実的なのかな、と。

さそう 僕はだいたい4、5巻で終わる話を描くことが多く、何十巻も続く連載をやったことがないのでわからないところもあります。ただ、作家自身が型にあてはめたり、物語理論を意識して描いていなくても、物語の最後のほうに一番大きいハードルをもってこようとするのであれば、結果的に神話学者のキャンベルやボグラーが整理したようなかたちになりやすいという印象は持っています。とくに成長ものだとね。

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