2021.12.18
# エンタメ

映画や小説と何が違う? マンガの「ストーリーの作り方」

さそうあきらが語るマンガ脚本の理論

『神童』『マエストロ』『コドモのコドモ』などを代表作とするマンガ家のさそうあきらが、2006年から15年間の京都精華大学マンガ学部マンガ学科での講義経験をもとに『マンガ脚本概論』(双葉社)を刊行した。

同書では映画や小説などの創作指南本を参照しながらも、マンガというメディアにおいて使えるシナリオづくりのポイントが、学生に語りかけるようにしてわかりやすく説かれている。

マンガづくりは映画や小説をつくることとはどこが共通していて、どんな違いに気をつけていけばいいのか。さそう氏に訊いた。

[PHOTO]iStock
 

映画の脚本術に抜けているがマンガを描く上では必須になる

――さそう先生は「『はじめてのおつかい』モデル」をストーリーの基本的なモデルのひとつだと捉えています。物語の冒頭に「はたしてはじめておつかいを達成できるのか?」という「問題提起」があって、主人公がそれを実行していく過程でいくつもの「ハードル」(事件や障害)がいくつもあって、最後に「解決」に至る、と。

さそう 学生の作品だと、読者に対して最初に示した「これ、どうなる?」という問題から脱線していってそのまま終わることがときどきあるのですが、僕がシナリオづくりで一番大事だと考えているのは、提起した「問題を維持する」こと。ストーリーのどこを切っても、物語の序盤で読者の頭に浮かんだ「?」が維持されている状態が続いて最後までいくのが重要です。

――ハリウッド映画系の脚本術だと「ストーリー」の定義を「コンフリクト(葛藤や障害、衝突)が発生して解決する」と表現しているものがあると思うんですね。でもそうではなく「問題を提起する」が始まりなんだ、と。この言い方の違いによって、エンタメ映画だと多くの観客を惹きつけるために画面に激しさが必要だから「コンフリクト」という言葉を選んでいたのかなと気付かされました。でもマンガであれば、もっと些細なこと、小さな課題であっても、読者に問題・疑問を示してお話を成立させることができますもんね。

さそう 外国のシナリオ指南本は用語が難しくて、ストーリーにあてはめると結局どういうことなのか伝わりにくいことが多いんですね。学生にわかりやすく伝えるために「コンフリクト」ではなく、「問題」を提起して、維持するという表現を選びました、

いわゆる「ログライン」と言われる短い作品紹介文、あらすじについても同様です。横文字で言われてもピンとこない。大半の学生は自作を要約するのが苦手なんですが、ログラインって結局どんなものだと伝えたらいいか? ただ設定や導入部のあらすじを書けばいいわけではない。その短い文の中に「この話、どうなっちゃうんだろう?」と思わせる「問題提起」が含まれていて、読者があらすじを想像・予想したくなることが重要なんだ、と言っています。

――「問題には大きさがあって、それによってストーリーの長さが変わる」という視点が映画の脚本術にはない、ともありました。たしかにマンガは読み切りでも16ページなのか40ページなのか、連載なら全部で何巻なのか、連載でも続きもののストーリーなのか一話完結型なのか、尺がまちまちです。狙った長さにふさわしい問題、アイデアを選ばないと破綻しますよね。

さそう 当たり前ですが、マンガでは登場人物が増えるほど長くなるし、設定が複雑になるほど長くなる。学生はその意識がすっぽ抜けていて、まとめきれないことが多いんです。

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