鳥居は「門」ではない? 神社に鳥居がある本当の理由

神社の建築に残された信仰のかたち
神社のシンボルともいえる鳥居。神社の入口に置かれているイメージがありますが、日本の民俗研究の第一人者・新谷尚紀氏によれば、その信仰上の位置づけは、「門」では無いのだといいます。では、いったい何のために鳥居は存在するのでしょうか?
神社を通して日本古来の信仰のかたちを明らかにする新刊『神社とは何か』より、鳥居の意味を探ります。

鳥居と山門

神社といえば鳥居である。寺院といえば山門である。このちがいは神社と寺院のちがいをよくあらわしている。

寺院は、病院や学院や修道院などと同じく院の一種であり、壁囲いなどで周囲を囲い、一定の領域を主張する。それは世俗の世界から隔離した特別な場所であるという意味を発信しているものである。

したがって、その独自の領域を主張する寺院には、入門と出門という言葉も生まれている。禅宗寺院では、禁葷酒(くんしゅ)入山門、不許葷酒入山門、などと書かれた石碑もよく見かけられる。

鳥居は、それとはまったく異なるものである。

伊勢神宮や出雲大社や春日社など、神門があり神域の周囲に垣が廻らされているのは、仏教建築の影響による新しい様式であり、本来のかたちではない。むしろ、祇園八坂神社や厳島神社のように神域が開放的で門構えのない神社の方が古いかたちを伝えている。

日本各地の多くの神社がそうであるように、村の氏神や鎮守の神社には必ず鳥居はあるが、山門はない。自然の中の森や杜に祭られていて開放的で周囲には特別に囲い込む塀などはないのである。

鳥居の三類型

鳥居は門ではない。では鳥居とは何か、それを考える上では具体的な鳥居の実際を観察するのが第一の方法である。そこで、これまでの研究を参考にしながらあらためて整理してみる。

すると、

1. 伊勢神宮の鳥居のように、上部の笠木(かさぎ)に反り増しがなく水平で、笠木の下部の島木(しまぎ)もなく、貫(ぬき)が両方の真柱の内側までで木鼻(きばな)が出ていない単純な形、およびその類例。

伊勢神宮型

2. 出雲大社の鳥居のように、上部の笠木に反り増しがあり、笠木の下部に島木があ
り、島木と貫のあいだに額束(がくづか)があり、貫が両方の真柱の外側まで伸びて木鼻がある形、およびその類例。これが日本各地でもっとも多くみられる形である。

出雲大社型

3. 厳島神社の鳥居のように、笠木に反り増しがあり、島木があり、額束があり、貫が柱の外側まで伸びて木鼻がある、そして、二本の両方の真柱を支えるようにその前後に脇貫(わきぬき)もある脇柱が付けてある形、およびその類例。

厳島神社型

この3種類が、基本的な鳥居の形であり、笠木の上部に三角形の装飾を付ける日吉山王権現系の鳥居や、大神神社の三つ鳥居はあくまでも特殊な変化形と位置づけられる。

ただし、このような整理の案は、鳥居の多様な形態の整理と説明であり、鳥居とは何かという問題を読み解くものではない。

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