2021.12.09
# トヨタ

EV化で大ピンチ…ここにきて、自動車メーカーの「下請け工場切り」がいよいよはじまった

週刊現代 プロフィール

「カーボンニュートラル(脱炭素)は雇用問題だ」

日本には、末端まであわせて約550万人の自動車産業従事者がいる。急にハンドルを切れば、多くの人が路頭に迷う。トヨタ自身がこれまで非EV—つまりハイブリッド車や水素燃料車に賭けてきた事情もある。

そんな弱腰のトヨタを見て攻勢に出たのが、業界2位のホンダだ。今年4月に新社長に就いた三部敏宏氏が「2040年までに新車を全てEVとFCV(燃料電池車)にする」とぶち上げたのだ。

トヨタは焦った。この10月には、完全電気駆動の新車「bZ4X」を来夏に売り出すと発表し、EVシフトを急加速させた。トヨタのエンジン部品を製造する、ある下請け企業の幹部が明かす。

「いまトヨタ内部では『今後、エンジン関連業務を15%カットする必要がある』と言われています。それに伴って失われる雇用の規模も試算していて、約3万人だそうです。社会に与える衝撃が大きく、政府への根回しも必要なため、発表を躊躇しているようですが……もちろんウチも、その中に入るでしょうね。

5年後には潰れているかもしれないと思うと、やりきれない思いです」

 

自動車は数ミリの小さなビスから、心臓部たるエンジン、骨格となるシャシーまで、3万点を超える部品からなる精密機械だ。鉄、アルミ、ガラスや布、プラスチックと多種多様な素材が使われ、それぞれを無数の部品メーカーが生産する。一台の車は、何万人もの仕事の集大成なのである。

だがEVでは、エンジンがモーターに置き換わる。ガソリンを着火させるプラグも、ピストンとそれを駆動する回転軸(クランクシャフト)も、エンジン内部を満たすオイルもいらなくなる。

テレビや新聞では、EVや自動運転車が「夢の未来技術」とばかり持て囃されている。だが部品を作る下請け企業の経営者は、ガソリンエンジンづくり一筋の職人たちを、これから先も食わせなければならないのだ。真岡のエンジン部品製造会社幹部が言う。

「ホンダ系の受注が、最盛期に比べて今年は4億円も激減しました。スバルにはエンジン搬送用パレット(荷台)も納入していましたが、つい先週、『今まで作ってもらった分で、一旦キャンセルさせてほしい』と連絡が入ったばかりです」

工場が閉まり下請け企業がなくなって、人口に穴ができれば、当然その余波は街全体に広がり、その果てに街自体が「消えてしまう」可能性もあるのだ。どういうことなのか。その詳細については、後編の「日本のクルマ「EV化」のウラで、これから「自動車工場の町」に起こるヤバすぎる事態」でお伝えする。

『週刊現代』2021年12月4日号より

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