2021.12.09
# トヨタ

EV化で大ピンチ…ここにきて、自動車メーカーの「下請け工場切り」がいよいよはじまった

異国で掲げられた「EV化」「脱炭素」という錦の御旗が、日本の田舎町に影を落とす。時代遅れと言われる工場の一つ一つにも、その背後には無数の庶民の暮らしがある。これは新たな「戦争」なのか。

真岡市で起きていること

「なんで焼きそばなんだ」

職人の眉間に刻まれた皺が、いっそう深くなる。節くれ立った手で何十年も自動車部品の金型を削り、磨いてきた高齢のベテランだ。38歳の若社長は、気圧されて思わず下を向いた。

「俺たちはクルマの仕事に誇りを持っているんだ。それを今さら……」

'19年の冬、栃木県真岡市内の町工場で、地元企業・アオキシンテックの青木圭太社長は頑固な職人を説得していた。主力の自動車エンジン部品の受注額が、みるみる減っていく。なんとか見つけた仕事が、カップ焼きそばを容器に詰める機械の部品製造だった。

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「エンジンは衰退していきます。新しいことをやらないと、みんな生き残れないんです。仕事は私が作ります。どうか、ついてきてくれませんか」

だが職人は渋面を崩さない。高い技能とプライドを持つ彼らは、一人一人が替えのきかないプロフェッショナルだ。自動車のエンジン部品に比べて食品製造マシンの部品は単価が安く、儲けが薄いこともネックだった。

青木氏が述懐する。

「EV(電気自動車)が出てきたばかりの10年前は『まずいかも』という予感はありましたが、当分先の話だと思っていました。しかしこの数年、状況が急速に変わっていった。EVシフトとは、かくも厳しいのかと思い知りました」

アオキシンテックの最大の納入先は本田技研工業(以下ホンダ)だ。そのホンダがエンジンを製造する「パワートレインユニット製造部」を置くのが、真岡工場である。

真岡工場では、最盛期には2000人を超える従業員が働き、さらにその下にアオキシンテックのような下請け、孫請け企業が無数に連なっていた。真岡はそうして栄えてきた工場の町だ。

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