140億年前、なぜビッグバンによって宇宙が生まれたのか

『時間の終わりまで』読みどころ【2】

「なぜこの宇宙は存在するのか?」という究極の問いを超ひも理論で解き明かそうとした名著『エレガントな宇宙』。その著者ブライアン・グリーンによる久々の新作『時間の終わりまで』がこのたび刊行された。

なぜ物質が生まれ、生命が誕生し、私たちが存在するのか。膨張を続ける「進化する宇宙」は、私たちをどこへ連れてゆくのか。時間の始まりであるビッグバンから、時間の終わりである宇宙の終焉までを壮大なスケールで描き出し、このもっとも根源的な問いに答えていく第一級のポピュラーサイエンス。その一部を紹介する今回は、アインシュタインですらわからなかった宇宙誕生の謎に迫る。

ビッグバンとは何だったのか

1920年代の半ば、イエズス会の司祭ジョルジュ・ルメートルは、アインシュタインが新たに作った重力理論──一般相対性理論──を使って、宇宙は何か爆発のようなもので始まり、それ以来ずっと膨張を続けてきたという過激な考えを発展させた。

ルメートルは、司祭としての仕事の余暇に物理学をたしなむというタイプの物理学者ではなかった。彼はマサチューセッツ工科大学で博士号を取得し、ごく早い時期に一般相対性理論を宇宙全体に応用した物理学者のひとりだったのだ。

【写真】ジョルジュ・ルメートルジョルジュ・ルメートル photo by gettyimages

アインシュタインは、宇宙に含まれるものには始まりと途中と終わりがあるが、宇宙そのものはつねに存在していたし、永遠に存在し続けるはずだと直観的に考えており、彼がそれまでの10年間に、空間、時間、物質の本性について次々と新しい発見をすることができたのは、その直観の導きのおかげだった。ルメートルがアインシュタインの方程式を分析して、その直観に反する結果を得ると、アインシュタインはぴしゃりと彼をはねつけ、この若き研究者に向かってこう言った。

「あなたの数学は正しいが、あなたの物理学はおぞましい」。

アインシュタインは、ルメートルは方程式をいじくりまわすのは上手かもしれないが、そうして導かれた結果のうち、どれが現実の宇宙を反映しているか判断するために必要な、科学的センスに欠けていると言いたかったのだ。

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