アップル従業員の年収は7400万円超?
まず、従業員1人あたりの年間粗利益を見よう。
(注:以下の計数は2020年度のもの。2020年の平均的な為替レートでドルに換算してある。トヨタ自動車〈連結ベース〉の2021年3月までの年度につき、Yahoo!Finace 〈以下、Yahoo〉のデータでは、Revenueが31.32兆円だ。一方、同社決算短信での営業収益は27.2兆円で、一致しない。ところが、有価証券報告書によると、金融収益も含む営業収益は29.9兆円であり、Yahoo のデータとかなり近くなる。ここでは国際比較を行なうため、Yahoo のRevenueを売上として用いる)。
「粗利益」とは、売上から売上原価(原材料費等)を引いたものだ企業の「稼ぐ力」を示す。「付加価値」とも呼ばれる。以下では、この言葉を用いることにする。なぜこれを見るのか? 賃金は、ここから支払われるからだ。つまり、企業が賃金を支払うための原資だ。これが増えなければ、賃金は上がらない。
(注:前記期間でのトヨタにつき、YahooでのGross Profitは、4.83兆円だ。一方、有価証券報告書では、売上原価が23.1兆円で金融費用は1.4兆円。この合計を前記29.9兆円から引くと5.4兆円となる。YahooのGross Profitと約6000億円の差があるが、国際比較のため、Goss Profitを付加価値とする)。
従業員1人あたりの付加価値を実際に計算してみると、トヨタは12.3万ドル、サムスンは25.1万ドル。それに対してアップルは99.2万ドルと、トヨタの8倍以上にもなる(表参照)。
■トヨタ、サムスン、アップル、東芝の財務状況(2020年度)

付加価値のうちどの程度が人件費になるかは、企業によって違うが、トヨタ自動車の場合を参考として、他社の平均給与の円換算値を推計した(注:トヨタ自動車の有価証券報告書によると、2000年度における同社の従業員1人あたり平均給与は858万円。これは、同社の一人あたりGross Profit 1320万円の65%に当たる。他社については、この比率を1人あたりGross Profitに乗じて、1人あたり平均給与を推計した)。
すると、アップル場合は7400万円超という「とてつもない」額になってしまう! もしそうなら、日本人がアップルで4年間働けば、日本で40年間働いたのと同じことになる。あとは、日本に戻って遊んで暮らせるだろう。
いくら何でもこれはおかしいと思って、何度も計算をチェックしたのだが、間違いない。これは現実なのだ。
なぜこのような「とてつもない」ことになるのだろうか?
ひとつの理由は、アメリカの場合、一企業内でも、大きな所得格差があることだ。経営者が驚くほどの高額所得を得ている。また、一般従業員でも業績によって、信じられないほど巨額のボーナスを得る場合がある。
ただ、それだけではない。以下に述べるように、納得的な理由がある。