迷走するイージス・アショア代替案…「壮大なムダとなる可能性」が指摘されるワケ

冷静に代替案を再考すべき
伊藤 博敏 プロフィール

大型化を避けるために、SPY-7レーダーを改修しての小型化も考えられる。それだと「まや」型の建造費も抑えられるのだが、今度は日本独自の「異端児システム」となる危険性がある。海上自衛隊OBは、ノルウェイ海軍を例にこう指摘する。

「ノルウェイ海軍は、もともと巡洋艦(1万トン級)かそれ以上の艦艇への搭載を前提にしたSPY-1というレーダーを、5000トン級のフリゲート艦に収まるようにSPY-1Fというレーダーに改修しました。小型化は成功しましたが、今度は、ノルウェイ海軍だけのシステムとなったために、維持、整備などの即応体制を取るために、相当な手間と時間を要し、苦労しています」

レーダーを改修、小型化するのはいいが、それは日本独自のシステムとなるわけで、しかも、SPY-7は米の品質保証がなく、システムの持続可能性、能力向上などは日本の責任において、独自に開発しなければならない。このあたりを含めて「異端児システムの危険性」と、指摘されている。

 

米との乖離も…代替案を再考すべき

さらに、米との乖離も気になるところだ。

米インド太平洋軍の司令官を今春まで務めたフィリップ・デービッドソン氏は、中国軍の台湾侵攻の可能性に言及、「ミサイル、サイバーや訓練能力、兵力の相互利用や後方支援といった中国人民解放軍の変化は、中国がその道を選択すれば、6年以内に台湾を侵攻する能力を備える」と語って注目を集めた。それを前提に、最重要軍事拠点となるグアムに改良型イージス・アショアを導入、強固な統合防空・ミサイル防衛体制を築くことが、「最優先課題だ」と、述べていた。

フィリップ・デービッドソン氏/photo by gettyimages

国防総省は、既に、グアムのミサイル防衛で、システム開発経費約130億円を2022年度に予算要求。そのシステムは、先進的な巡航、弾道、極超音速ミサイルの脅威に対処するもの。米ミサイル防衛庁長官は、初期運用能力を有するシステム配備を25年に達成するよう米議会から求められ、指揮統制システム、レーダー、発射機などを地中化、分散化して生存性を高めることを表明した。例えばイージス・アショアのレーダーが破壊されても、イージス艦のレーダーを活用、残ったシステムで任務を遂行できる。

日本のイージス・システム搭載艦がSPY-7を搭載すれば、米海軍がグアムの陸上イージスやイージス艦で採用すると見込まれるSPY-6とは相互運用性が限定される。米政府の保証も受けられないので、コストは膨大になるうえ、中国や北朝鮮が開発、実験を繰り返す極超音速ミサイルには対応できず、基本は弾道ミサイルだけだ。そのうえに配備が10年後では、台湾有事には間に合わず、しかもガラパゴス化している。

まだ、建造費は計上されていないのに、SPY-7のレーダー改修費58億円が要求されるなど、みながクビを傾げるなか、米側の方向性との乖離を無視して、既成事実だけが積み重なっている。しかし、将来的に投じられるのは3兆3000億円。今からだって遅くない。違約金を支払ってでも、米側の動向を参考にしながら冷静に代替案を再考すべきだろう。

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