2021.12.10
# 学校・教育

山中教授が同級生の小児脳科学者と語る「子どもの脳を育てる3要素」

ノーベル賞科学者はいかに育てられたか
山中 伸弥, 成田 奈緒子 プロフィール

自己肯定感は大人になってからでは高まらない

成田 実をいうと、私はいまも細々だけど臨床研究をしてて。今取り組んでいるのは、発達障害のある方たちなど向けの脳トレ。それを本来の脳トレにはない目的に使う研究なんです。脳波を測りながら脳トレを繰り返し、毎回「今日はこんな結果だったけど前回よりここが上がっている」とか「次はリラックスを心掛けてもっと上げよう」といった教育的な介入支援をします。そのことによって、脳の使い方や脳波の分布変化を見ると同時に、逆境というかピンチを乗り越える力がどれだけ上がるかを調べています。

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山中 ほほう、そうなんや。

成田 発達障害のある方は、乗り越え力と言われる「レジリエンス」が低い方が多いので、その理由を脳科学的に探って対策を立てようということで。その力の高さを調べる「質問紙」があって、それを使うんです。

山中 どんなことがわかるの?

成田 実は、乗り越える力って、「自己肯定感」「社会性」「ソーシャルサポート」という3つのパーツからできてるの。例えば発達障害の方は周りに理解されにくいため、自己肯定感が低いことが多い。ですが、それに加えて、そもそも発達障害は社会相互作用の障害なので社会性も同様に低い場合が多いです。周りの人と関係性を上手く保てるかどうかという部分ですね。そして、最後のソーシャルサポートというのは「周りの人に助けられてるっていうことを実感する力」になります。つまり、「おかげさま」と思える力。これが3番目の要素になるの。

山中 なるほど。3つの要素で点数化されるんやね。

成田 そうなの。その3つが相まって評価されるんですが、発達障害の方はソーシャルサポートの部分、「私は誰かに支えられていることを実感していますよ」の点数も低いことが多いのです。

山中 そうなんだ。障害がある方にはそこを強く実感してもらえる社会でないとあかんのに……。

成田 おっしゃる通り。ところが、そういう方たちに何回か私たちのところに来てもらって脳トレをやる。そこで「お、ほら見て。前よりこんなにストレス脳波が下がったじゃん。じゃあ次回はちょっと深呼吸しながらやろう」みたいなことをやって、10回前後くらいトレーニングすると、脳の使い方も良くなって、脳波の分布も正答率の数値もぐっと良くなるんだよ。レジリエンス得点も上がったのですが、中でも「おかげさま」と思える力、ソーシャルサポートの点数が一番上がったんです。

山中 すごいなあ。そんなことがちゃんと証明されているんだね。

成田 一方で、レジリエンスのもう1つのパーツである自己肯定感はトレーニングしても、そこまで上がらないんです。自分なんてだめだと感じてしまう気持ちは、なかなか変えられない。社会性も同様に特性でもあるので上げるのはやや難しい。でもね、3つの要素のうち1つでも上げられれば全体のレジリエンスの得点は上がるんです。困難に立ち向かう力が上がるんです。それで、彼らの社会の中での生きづらさを解消できれば、とても貢献できるのではないかと思って研究を続けています。

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