実に15年も続いた偉大な記録
甲子園球場のクラブハウスにつながる薄暗い渡り廊下で、試合前練習を終えた鳥谷敬を待っていた。2018年5月27日。巨人とのデーゲームを控えたこの日も、普段と変わらぬ様子で引きあげてきた。

プロ15年目のシーズン。開幕戦こそ「2番二塁」でスタメンに名を連ねたが、以降は思うような成績を残せていなかった。5月20日の中日戦を最後に、22日から27日までの5試合はいずれも代打での途中出場が続いていた。新人だった04年9月9日ヤクルト戦から続いていた連続試合出場記録は、もはや風前のともしびとなっていた。
「15年もの間、続いてきた記録がもしかしたら、もう止まるかもしれない。誰よりもストイックに練習する姿も、記者として見させてきてもらった。積み重ねてきたものが止まる怖さは、トリにはないの?」
長いプロ野球の歴史でも歴代2位という大記録。その背景にあるものや、揺れ動いているであろう心情に少しでも迫りたかった。ただ、偉大な記録の終焉を、リアルタイムで取材できるかどうかは分からない。不躾な質問であることは承知の上で、問いかけたのだった。