直立二足歩行だけではなかった! 気候乾燥の時代に生じたヒト独特の特徴

「食性変化」猿人が選んだ2つの選択
海部 陽介 プロフィール

ヒト独特の特徴は、形態だけでなく行動様式上も

ここで、霊長類の中で、ヒトにどのような独特の特徴があるのかを考えてみましょう。

まず身体特徴についてですが、ヒトはサルの中では大型な部類です。直立姿勢をとり二本足で歩きますが、これはヒトの代名詞的な特徴といえるでしょう。このユニークな行動様式の影響で、類人猿と比べて腕は短く、脚が長い特徴があります。手は、歩行から開放されたためにとても器用になり、逆に、足は歩行専門になってものをつかむ機能を失いました。

さらに、骨盤や足の骨のつくりも大きく変化し、脊柱も直線状でなく、緩いS字カーブを描くようになるなど、全身のつくりが大改造されました。

【イラスト】ヒトとゴリラの骨格ヒトとゴリラの骨格イメージ。左側の足底は下がヒト、右側の立位は左がヒト illustration gettyimages 

ヒトの体の特徴はまだまだあります。類人猿よりも胴が細く、体毛は局所的に濃いだけで、かなり衰退しています。脳が劇的に大きくなったため、頭骨は高く丸みを帯びるようになり、逆に顔は小さくなって、前方へ突出せずに額の真下に位置するようになりました。口を開けてみると、犬歯はサルのように大きく突きでておらず、ほとんど切歯と区別できないほどに退縮してしまっています。

次に行動上の特徴を見ると、これは細かくあげればきりがないほど、ヒトの生活様式は独特です。社会性が強いのは他のサルたちと共通ですが、ヒトの社会は、サルたちより格段に複雑なルールやしきたりがあり、かつそれも時代によって大きく変化しえます。

こうしたヒトの脳は、芸術という、生物界では独特の要素も生みだしています。ただ食べて日々を生き延びて、子孫を増やしていくだけなら、生物には、絵画も音楽もアクセサリーも格好いい服も必要ありません。しかし私たち現代人は、不思議なことに、そのようなものを欲しがります。これは、霊長類はもちろんのこと、生物界全体の中で、非常にユニークなヒトの側面です。

ヒト科ヒト亜科ヒト属ホモ・サピエンス・サピエンス、現在の分布:"世界中"!

もうひとつ、ヒトの大きな特徴をあげましょう。それは広い地理的分布です。

私たち現代人は、世界中のあらゆる陸地に暮らしています。私たちはこのことをあまり意識せず当たり前と思ってしまいがちですが、実は、これは生物界ではきわめて特殊なことです。他の陸生動物を見てみても、これほど広い分布を示すものはありません。

【イラスト】世界中に分布するヒトヒトは世界中に分布 illustration by gettyimages

こうしてみると、ヒトはサルの仲間であるといっても、かなり風変わりなサルだということがわかると思います。

こうしたヒトの特徴が、いつ、どのように、なぜ進化し、そのことにどのような意味があるのかを探っていくのが、人類進化を研究する者たちの究極の目標です。

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