楽しむと「脳のガソリン」が分泌される

「頑張れば認めてもらえる」「次もやれば、ほめられる」というのは、「チャンスには必ず打てよ」とか「大事なところで抑えろ」というような結果や成果に紐づいたものではない。そのため、結果が出ていない選手に対しても、線条体が動いてやる気が出せる状態にもっていけるのだ。

それに加え、新庄監督から「野球を楽しもうぜ」という姿勢が見える。もっといえば、なんだかわからないけど監督自身が毎日楽しんでいるし、一緒にいる選手も楽しそうだ。

現役時代から、新庄氏は「楽しそう」だ Photo by Getty Images

楽しんで取り組めるようになると、脳内でドーパミンが分泌される。「脳のガソリン」と呼ばれるドーパミンは、技術の習熟度をアップさせ、人を成長させる脳内物質だ。したがって、楽しめているほうが野球だってうまくなる。少しずつのスモールステップだが、確実にフォロワーを成長させられる。

この強化学習とは逆で、リーダー(監督やコーチ)から「ここがダメ。あれを直せ」「もっと努力しないと試合に出られない」「今年が勝負だ」などと圧迫、抑圧されると、フォロワーである選手の線条体はピタッと停止して動かなくなる。選手たちが自発的に「ここまできたら優勝しようぜ」と気勢を上げるのはよいが、監督が「優勝を目指せ」と旗を振るのは効果的とは言えないのだ。

お客さんを心から楽しませるパーフォーマンすも多く見せてきた新庄氏。2000年に阪神からメジャーにFA移籍したときも阪神は残留を提案したという Photo by Getty Images
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「喝」による「一発学習」にはマイナスの副作用が

ガツンと言われる、大人がよく言う「喝」を入れられると、そのことで一瞬発奮して一時的にパフォーマンスが上がることがある。子どもが親からの働きかけで学習塾に通い始めると、一瞬成績が上がることがある。発破をかけられると強く記憶に残るので一瞬頑張るからだ。大人たち(特に昭和の)は「発奮させて乗り越えさせる」などと言うが、このやり方には悪影響だというエビデンスしかない。

そのように、誰かに世話を焼かれ短期間で向上する状態を「一発学習」と言う。叱られたり、怒られて取り組むことが多いため、別名「恐怖学習」と呼ばれる。日本の運動部活動やスポーツ指導の現場で、子どもたちが暴力やパワーハラスメントに苦しんできた背景には、指導者らのこの手法がある。

刺激を与えたその瞬間の教育効果は上述の強化学習の3~4倍と言われるが、一発学習はマイナスの副作用を伴う。これを繰り返すとバーンアウトしやすいうえ、他者から世話を焼かれたり、強い刺激を受けないと動けない人間になってしまう。対象が子どもだとすれば、将来は主体性のない大人に育ってしまう危険性がある。そう考えると、強化学習と一発学習のどちらを選ぶかは、火を見るよりも明らかといえる。

つまり、新庄語録には学術的なエビデンスがあるのだ。