ジャーナリストの島沢優子さんは自身も大学でバスケットボールの全国大会に出場しており、スパルタも経験してきた。そして長くスポーツの現場や教育の現場を取材している。そんな島沢さんがいま注目しているのが、日本ハムファイターズの「ビッグボス」新庄剛志監督だ。脳科学的アプローチの取材も長くしてきた島沢さんに、果たして「新庄語録」には効果があるのか、そしてあるとしたらそれはなぜなのかを、学術的エビデンスをもとに考察いただいた。

2006年、東京ガールズコレクションでの新庄さん。阪神、日本ハム、NYメッツ、サンフランシスコジャイアンツとチームをわたったが、常に注目を集めてきた Photo by Getty Images
新庄剛志(しんじょう・つよし)1972年1月28日、長崎生まれ、福岡育ち。1990年阪神ドラフト5位で入団、二軍スタートもすぐに頭角を現し、ベストナインやゴールデングラブ賞の常連に。2000年にFAでNYメッツ入り、松井秀喜氏などと同時期にメジャーで活躍した。2001年末にサンフランシスコ・ジャイアンツに移籍、2002年には日本人として初めてワールド・シリーズに出場。2003年メッツに戻ったのち、2004年に帰国して日本ハムファイターズに入団。背番号「5」からここでは「1」となり、2006年の日本一にも貢献した。同年10月に引退。選手時代からベストドレッサー賞など様々な賞も受賞し、野球とは別の分野でも注目を集め続けている。
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優勝なんか一切目指しません

ついつい「へえ、なるほどね」「すごいなあ」と唸ってしまう。
折々に報道される「ビッグボス」、先ごろ北海道日本ハムファイターズの新指揮官に就任した新庄剛志監督(49)の話だ。球場に空から舞い降りてきたり、派手な衣装で現れたり。現役時は天然な不思議ちゃんだとばかり思っていたが、そうではなさそうだ。

「日本ハムも変えたいし、プロ野球を僕が変えたいという気持ちで帰ってきた」

11月4日に行われた監督就任会見で、「変える」「変えたい」という言葉を何度も発した。今季で3年連続5位のチームを鼓舞したい気持ちもあるのだろうが、「監督像を変える」とも宣言している。選手はもちろんのこと球団関係者へ「自分たちは変わらなくてはならない」というメッセージになったに違いない。

もうひとつ印象的だったのが、以下の言葉だ。

優勝なんか一切目指しません。一日一日、地味な練習を積み重ねて何気ない試合、何気ない一日を過ごして勝ちました。勝った、勝った、勝った、勝った。それで9月あたりに優勝争いをしていたら、さあ! 優勝目指そうと」

一日一日。地道な練習の積み重ね、何気ない試合。新庄監督がプロセスを重視していることがよくわかる。上司や親、監督といった「リーダー」的存在の大人が「プロセス重視」の姿勢を保つことは、部下や子ども、選手ら「フォロワー」の成長に欠かせない。このことは心理学及び脳科学の分野でも証明されている。

このことは、脳科学では「強化学習」と呼ばれる。
人の「意欲」にかかわるのは、大脳基底核の一部である線条体と呼ばれる場所だ。線条体は、行動と情感を結びつけたり、筋肉の緊張を調整することに関与する神経細胞の集合体。フォロワーに対し丁寧に対話して気持ちを汲み取ったり、取り組んだプロセスを「よく頑張ったね」とか「楽しめて良かったね」などと認めてあげると、線条体はよく動く、つまり活性化する。

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