出社はもうすぐ!? スムーズな日常復帰のために「社会的時差ボケ」を知っておこう!

休日でズレた生活リズムは早めに正す!

体内時計で支配されている自分の時間と、外界の時刻とがずれていると、いわゆる時差ボケになります。一方で、自分のなかで主時計と末梢時計の位相が正常よりずれてしまうと、これも時差ボケなのです。

つまり、自分と外界のずれと、自分のなかでの臓器間のずれの2種類の時差ボケがあるというわけです。この2種類のボケのうち、平日と休日では生活リズムが大きく変わることで起こる「社会的時差ボケ」は、休日明けの朝がキツいと感じる"月曜病"に大きく関与しています。

週末と平日の違いからくる「社会的時差ボケ」

休日の夜更かしと朝寝坊などによって平日と休日では生活リズムが大きく変わる人の話をしましょう。

平日の入眠と起床の中点の時刻を計算します。もし0時入眠、6時起床ならば、中点は3時になります。次に休日も同様に、たとえば2時に入眠、10時に起床であれば、中点は6時になります。休日の中点から平日の中点を引いた3時間が、この場合は社会的時差ということになります。平日と休日が同じ睡眠パターンだと、社会的時差は0時間ということになります。

一般的には社会的時差が1時間以上だと時差ボケということになります。社会的時差ボケの大きさに比例して、喫煙者の割合が高く、高度肥満になりやすく、うつ病の発症が多く、大学生では成績が悪い場合が多いというデータがあります。また小学生では、社会的時差ボケが1時間以上あると昼間に強い眠気を催すといわれています。

我々は、東京都港区の公立の小中学生、約1万人を対象にして、社会的時差ボケについて調べました。第6章で述べたように、社会的時差ボケは、小学生より中学生で大きく、男子より女子で大きいことがわかりました。また、いろいろな質問事項と相関が認められ、たとえば社会的時差ボケが大きいと成績や精神衛生のスコアも低い傾向が見られました。また、スマートフォンなどを夜遅くまで使っている人ほど社会的時差ボケが大きいという結果となりました。

社会的時差ボケはどうして起こる?

ではなぜ社会的時差ボケが生まれるのでしょうか。

平日は学校や会社の始まる時間が決まっているなどの社会的要請で、朝は学校や職場の始業に間に合うように早く起き、その早起きのために早めに寝ます。ところが休日は本来自分が寝たい遅めの時刻に寝て、そうすると起きるのも遅くなります。

先ほど求め方を紹介した、休日の入眠と起床の中点の時刻こそが自分自身の体内時計の位相を示しているわけで、平日の中点の時刻は社会的に決められた仮の姿の時計であることがわかります。

【グラフ】社会的時差、朝型・夜型、睡眠負債の関係社会的時差、朝型・夜型、睡眠負債の関係 『時間栄養学』より

つまり、平日は朝早起きして光で主時計の位相を前進させ、朝食で末梢時計を前進させていますが、休日は夜更かししがちで、光が主時計を遅らせ、夜食などを摂っていると末梢時計も遅れてしまうというわけです。

また起床が遅いと、朝の光による主時計の前進作用が起こらず、朝食も摂らないか、あるいは朝食・昼食兼用になるなどして、末梢時計の前進作用も弱くなります。

すなわち週末の2日間で体内時計がかなり遅れてしまったことになるのです。

崩れた生活リズムは1週間では取り戻せない?

週末でリズムを崩した後、月曜日の朝から、朝の光や朝食で体内時計を前進させようとしますが、体内時計の前進は時間がかかるので十分に前進しないままに金曜日となることもあり、また週末が来て遅れてしまうことになったりします。

これに関連して、マウスで社会的時差ボケモデルを作って実験を行いました。平日と週末がないマウスでどのように社会的時差ボケモデルを作ったかというと、2日間3〜6時間明暗周期を後退させ、5日間もとの明暗周期に戻すという、光による調節を行いました。

その実験を行うと、平日に相当する5日間では、活動リズムの位相は戻りませんでした。人間の月曜病は、週末をあまりに充実させた生活を送ると月曜日の朝はきついというものですが、実はその原因は週末の体内時計の遅れが月曜日に出てきたためかもしれないのです。

また我々の、ヒトを対象とした実験で、社会的時差ボケと遺伝子発現を調べたものを紹介します。

朝型で社会的時差ボケがない被験者と夜型で社会的時差ボケが大きい人で、月曜日と金曜日に髭を4時間おきに抜いてもらい、その毛母細胞を末梢時計としてPer3の遺伝子発現リズムを調べました。

*Per3遺伝子:毛母細胞中の時計遺伝子。皮膚は体内時計との関わりが密接なため、皮膚付属器である毛の毛母細胞中の時計遺伝子で遺伝子発現リズムの振幅を観察する

仮説では、時差ボケがない人は月曜日も金曜日も似たリズムパターンを示しますが、時差ボケの人は月曜日のリズムの位相は遅れているが金曜日には進んでいるパターンになると予想しました。

【グラフ】時計遺伝子発現リズムの月曜日・金曜日の差社会的時差ボケ時の時計遺伝子発現リズム、月曜日と金曜日の差。(A)実験プロトコルと仮説図。(B)髭からのPer3 の発現量の指標、月曜日と金曜日の日内リズム。社会的時差ボケの人の末梢体内時計のリズム性は、消失している 『時間栄養学』より

その結果、時差ボケがない人は仮説通りだったのですが、時差ボケの人のリズムは月曜日、金曜日のいずれも位相が異なるのではなく、振幅が小さくなりリズムの発振機構が低下していたのです。おそらく、月曜と金曜では位相の引っ張り合いが起こり、ピークが異なる山が重なり、結果的に山が小さくなったものと考えられます。

つまり社会的時差ボケが大きい人は1週間を通してリズム性が悪化しているものと思われます。

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