素朴な疑問「息を止めるとなぜ苦しくなるのか?」 

酸素が減る? 二酸化炭素が増える?

息をこらえると、だんだんと苦しさを感じます。これは、体内の酸素が少なくなって苦しくなるのか、それとも二酸化炭素が多くなって苦しくなるのか、皆さんはどちらだと思いますか?

じつは、体内には酸素が減ったり二酸化炭素が増えると、それを感知して呼吸中枢に伝えるセンサーが備わっていて、反射的に換気量を増やすことにより、元の状態に戻す仕組み(フィードバック制御)が働きます。

これらは低酸素感受性や高二酸化炭素感受性と呼ばれますが、多少の低酸素では換気量があまり増えないのに対し、高二酸化炭素に対してはすぐに換気量が上がるため、高二酸化炭素のほうが、呼吸応答への影響が大きいといえるのです。

したがって、息を止めて苦しくなるのは、二酸化炭素が溜まり、呼吸中枢を刺激するのに呼吸できないというミスマッチが、呼吸困難感を引き起こすから、というのが正解です。

「呼吸をしない=息こらえする」が得意な人とは?

一般人の息こらえは30〜90秒くらいが限度です。呼吸をしないと体内の酸素が減って二酸化炭素が増えていきますが、どちらも血液や脳脊髄液の化学情報(ガス濃度など)を受容器で感知し、脳(中枢)に伝え呼吸中枢を刺激する「化学受容器反射」で呼吸を促進しようとします。

冒頭で述べたように、高二酸化炭素のほうが呼吸中枢を強く刺激します。呼吸中枢が刺激されても呼吸できないので、その矛盾によって呼吸困難感がどんどん高まり、限界に達します。ただし、感受性は人によってかなり異なります。

息こらえ時間は、二酸化炭素の感受性が低い人、また酸素をあまり使わず、二酸化炭素をあまり出さない、代謝の効率がいい(≒基礎代謝量が低い)人が有利です。もちろん酸素も重要で、肺活量やヘモグロビン/ミオグロビン量が多い方は酸素をたくさん溜めておけます。さらいに、練習や精神修業で不安感をなくし、余分な酸素を消費しないことも重要です。

一流ダイバーは、二酸化炭素の感受性が低いのか?

潜水(ダイビング)は息こらえ状態での運動で、水深、水圧の影響も受けます。一流のダイバーは、アプネアというダイビング競技中に、水中で10分以上も呼吸が止められ、100m以上も潜ることができます。なぜそんなことができるのでしょうか?

【写真】ダイビングダイバーは、なぜ長時間、深さのある水中に潜ることができるのだろうか photo by gettyimages

息こらえすると、反射的に心拍数が低下し(徐脈)、交感神経活性化による末梢の血管収縮、それによる血圧上昇が起きます。さらに、25℃以下の冷水に顔をつけると、副交感神経が亢進し、心拍数を下げる「顔面冷却」の影響も加わります。これらをあわせて潜水反射(Diving reflex)と呼びます。

この潜水反射の影響で、酸素利用が抑えられ、水中では息こらえが長く続きます。この潜水反射は一流ダイバーやクジラなどの水生哺乳動物でより強く働き、潜水中に心拍数が毎分20〜30拍まで低下することもあります。

一流ダイバーが深く長く潜れるのは、高二酸化炭素感受性が低いからだと思われがちですが、そうでない場合もあり、はっきりしていません。訓練によって、呼吸中枢での反射的な不随意呼吸が低減したり、肺活量やヘモグロビン等の増加が起こっていることが考えられます。

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