2021.12.06
# ライフ

山中伸弥教授が「10~20代の若者に“やってほしくない”コト」

藤井聡太×山中伸弥 スペシャル対談(2)
分野は違っていても、過酷な競争の世界で最前線で前人未到の挑戦を続ける藤井聡太棋士と山中伸弥教授。彼らの日常の準備、学び方、メンタルの持ち方、AIとの向き合い方…。日々努力を続けるすべての人へ贈るメッセージを『挑戦 常識のブレーキを外せ』からピックアップしてお届けします。

若手研究者に留学を勧める理由

山中    僕はコロナ禍が始まる前は毎月、サンフランシスコのグラッドストーン研究所に通っていたんですよ。

藤井    ずっと毎月ですか?

山中    10年以上、毎月。あそこに行って世界中から集まっている20代、30代の研究者と話していると、すごいんですよ。何か違う。僕なんかが考えつかないようなことを考えている。彼らと接していると、「本当にこんなすごいことが始まるかもしれない」とワクワクします。そんな感覚に毎月接しているから、それでずいぶんバランスを取っている感じがしますね。だから時差は大変なんですけど、続けているんですよ。藤井さんは海外になんて行く暇がないですよね。

藤井    はい、行ったことはありません。

山中    いつか行くと思いますけど、研究者は外国に行くべきだと僕が思うのは、国によって美意識や価値観が違うんですよ。外国に行って、それが初めてわかる。日米の研究者の違いを物語る話があるんです。

あるタンパク質を精製したい時、精製用カラムという不要なものを除去して、欲しいものだけが残るシステムを考える際に、まず1センチぐらいの小さいカラムを作ってうまくいった。でもそれだと精製できる量が限られて役に立たないからと、アメリカ人は千倍の大きさにした。けれども圧力のかかり方などが違ってうまくいかない。

どうしようかと悩んでいると、日本人は「何悩んでるねん。小さいのを千個作ったらええやん」(笑)。でもそれはアメリカ人の美意識に反するんですよ。エレガントに1個のシステムで作りたい。まぁ言ってみればブルドーザーです。日本人は職人。全然違う。

藤井    大きいのを1個か、小さいのを千個か、総量は同じですけど。

山中    そう。どっちがいいかわからないけど、僕たちは両方を選んでいます。基礎研究をしているアメリカ人は、みんな「これでひと花咲かせてやろう」とか「ベンチャーを作ってやろう」とか狙っているんですよ。

だからアメリカの科学者は非常に明るい。前向きです。職人の日本人とは全然違いますね。これもどっちがいいかは言えないけれども、ただ、科学全体が今はビッグスケールになったので、「一芸に秀でる」という日本人の特質は、これからは大変かもしれないですね。

 

だから、とくに若い人には海外に行ってほしいと思います。今はコロナの感染拡大のため、なかなか海外には行けないけれど、行けるようになったらぜひ留学にチャレンジしてほしいですね。僕は3年間の留学で新しい価値観を得ることができたし、海外から見た新たな日本を知ることができました。研究者として大きく成長できた、かけがえのない機会だったと思います。

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