【数学間違い探し】雑誌・新聞も間違っていた⁉ 「AKBじゃんけん大会」の本当の確率

考える力が身につく「数学間違い探し」
芳沢 光雄 プロフィール

中級の話題

「平均経済成長率」という言葉を考えてみよう。

2002年2月に始まった景気拡大は2006年11月で58ヵ月目となり、1965年11月から4年9ヵ月に渡って続いた「いざなぎ景気」を超えたと当時言われたものである。その間の景気回復は戦後“最長”となったものの、多くの国民にとってはあまり実感の伴わない回復だったと振り返る。

まず、GDP(国内総生産)に関するデータの発表では「四半期」という言葉がよく使われる。これは1年を1月から3月、4月から6月、7月から9月、10月から12月の4期に別けたうちの1つを意味する。ここで、それらを順に第1、第2、第3、第4の四半期と呼ぶことにしよう。

もし第1四半期で1%成長し、第2四半期で2%成長し、第3四半期で5%成長し、第4四半期で3%成長したとすると、その年の成長は

1+2+5+3=11(%)

となるだろうか。これは誤りで、

1.01×1.02×1.05×1.03=1.1141613

なので、約11.4%成長したと見ることが正しいのである。

「いざなぎ景気」は4年9ヵ月渡って続き、その間に67.8%成長した。「いざなぎ景気」を超えたと言われた2006年11月頃の新聞やテレビ報道などで、4年9ヵ月に渡って続いた「いざなぎ景気」の年平均成長率は14.3%というものもあれば、11.5%というものもあった。

当時、不思議に思って計算したところ、前者は、4年9ヵ月は4.75年なので、

67.8÷4.75=14.27…

という計算式から導いたことが判明した。これは、上で説明したことからも誤りである。実際、

1.143の4乗=1.143×1.143×1.143×1.143=1.70…

なので、既に4年間で70%を超す成長をした数値なのである。いざなぎ景気の年平均成長率は11.5%が正しく、それは次のようにして導かれる。

四半期すなわち3ヵ月ごとの単位で考えることにすると、4年9ヵ月は3ヵ月が

4×4+3=19(個)

あることになる。いま、

1.0276の19乗≒1.677

なので、4年9カ月で67.8%成長したいざなぎ景気の3ヵ月単位の平均成長率は約2.76%になる。そして、

1.0276の4乗=1.115…

となるので、いざなぎ景気の年平均成長率は11.5%が正しいのである。

筆者は当時、そのような誤った報道をしたマスコミに上記の説明を丁寧に伝えたのであるが、「いざなぎ景気の年平均成長率14.3%は誤りで、正しくは11.5%」という訂正の記事やコメントは見聞きしなかった。そこで少し間を置いてから、雑誌や著書に年平均成長率の説明を各種の平均(相加平均、相乗平均、調和平均、単純平均、加重平均)のうちの一例(相乗平均)として書いたことを思い出す。

「平均成長率」は、消費税増税に関する「景気条項」のキーワードである。それを鑑みても、このような言葉の定義こそ大切に扱うべきだろう。

関連記事