2021.12.02
# エンタメ

まだ不幸の先がある『カムカムエヴリバディ』上白石萌音が深津絵里の母を演じる理由

木村 隆志 プロフィール

不幸でも見ていられる上白石の演技

もともと上白石萌音は身長152cmの小柄な身体に反して、どこか心の強さを感じさせるタイプの女優。

安子は実家の菓子屋を手伝う、特に夢もない普通の少女で、上白石自身「安子は本当にピュアでかわいらしい子」とコメントしていた。

しかし、夫の不在中に母となり、家族を失うたびに「こんな強さがあったのか」と思わせる姿を披露。強くなる姿を見せることで、不幸続きでも「かわいそうで見ていられない」と「この子なら頑張り切れるかもしれない」の間でギリギリの線を保っている。

また、何気に大きいと思われるのが、近年主演を務めた『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)、『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)で演じた役柄のイメージ。苦況に陥っても明るくたくましく乗り越えていく姿が記憶に新しい視聴者が多いだけに、不幸続きの物語でも過度な痛々しさを感じさせない。

 

一方、藤本有紀の脚本は、「視聴者感情に配慮する」という点で、実に巧妙。まず序盤は、安子、稔、雉真勇(村上虹郎)の淡い恋模様と、穏やかな商店街の人間模様を描いて視聴者を癒していた。

その後、冒頭に挙げたようにつらい出来事が次々に起きるのだが、戦争のシーン自体はほとんどなく人間ドラマだけを掘り下げることで、「悲しいけど素敵な人たち」「かわいそうだけど本当にいい家族」などと感じさせていた。

象徴的なのが、命を落としたときのシーン。父・金太は家族に囲まれる幸せな夢を見ながらのナレ死。「ケチ兵衛」こと荒物屋の赤螺吉兵衛(堀部圭亮)も、酷い言葉を浴びせた息子・吉右衛門(中川聖一朗)を守って命を落とした。

夫・稔の戦死も知らせが届いたのみで、母・小しずと祖母・ひさが空襲を受けるシーンもなし。これらの徹底した配慮で視聴者は、夫婦や親子の愛情と絆に思いをはせられているのだ。

しかし、安子の不幸はこれで打ち止めではなく、まだまだ続きがあった。

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