「人類の二足歩行は草原で始まった」説を否定する注目の新説とは

木から降りたのが先か、立ったのが先か

地上に下りたから立ち上がったわけではない

なぜ人類は直立二足歩行を始めたのか。それに対する説明として、以前にはこんな話をよく聞いた。

「人類の祖先は四足歩行をしており、木の上に住んでいた。しかし、あるとき森林から草原に出てきたので、つまり木から地上に下りたので、立ち上がって直立二足歩行を始めたのである」

でも、これは、何だかよくわからない話だ。

たとえば、アフリカの草原にはいろいろな動物が棲んでいる。ゾウもいればキリンもいるし、シマウマもいればライオンもいる。でも、みんな四足歩行をしている。草原で二足歩行をしている動物なんて、まったくいない。

アフリカの草原には、サルの仲間も棲んでいる。ヒヒもいれば、パタスモンキーもいる。でも、みんな四足歩行をしている。草原で二足歩行をしているサルなんて、まったくいない。

【イラスト】草原で二足歩行しているサルの仲間はまったくいない草原で二足歩行しているサルの仲間はまったくいない illustration by gettyimages

草原に棲んでいる動物はみんな四足歩行をしているのに、どうして人類だけは草原に出ると二足歩行を始めたと考えたのか。なぜ、木から地上に下りると立ち上がったと考えたのか。おそらく論理的な説明は難しいのではないだろうか。

さらに1990年代以降、サヘラントロプスやアルディピテクスなどの初期人類の化石が発見されたことにより、上記の話はほぼ否定されることになった。なぜなら、いくつかの証拠から、初期人類は森林に棲んでいたことが推測されたからである。つまり、直立二足歩行は草原ではなく森林で進化したことになる。

それでは、どうして森林で直立二足歩行が進化したのだろうか。

類人猿は大きなサル

たいていのサルには尾があるが、尾のないサルもいる。尾のないサルを類人猿という。だが、類人猿には、尾のないことの他にも大きな特徴がある。それは体が大きいことだ。1番大きいサルはゴリラで、2番目に大きいサルはヒト、3番目はオランウータンだ。でも、こんなに大きなサルが木の上で生活をしていたら、困ったことが起きる。枝が細いと、折れてしまうのだ。

ところが、果実はしばしば枝の先のほうに実る。果実を食べようとすれば、枝の先のほうまで、つまり枝の細いところまで行かなくてはならない。でも、あまり無理をすると、枝が折れて、地上に落ちてしまう。そうしたら、死んでしまうかもしれない。いくら美味しい果実が食べたくても、死んでしまったら元も子もない。では、どうすればよいだろうか。

【写真】枝先の果実を食べようと、木の上で二足歩行が進化した可能性がある枝先の果実を食べようとすると、枝が折れて落ちてしまうかもしれない(写真はオラウータン) photo by gettyimages

枝を折らないためには、複数の枝に体重を分散させて、1本の枝に掛かる重さを減らせばよい。そうすれば、枝が折れる可能性は低くなるし、もしも枝が1本折れても、他の枝にぶら下がって助かるかもしれない。

このように、複数の枝に体重を分散させながら枝の上を歩くには、四足歩行よりも二足歩行のほうが便利だろう。足で枝の上を歩きながら、手で他の枝を掴むことができるからだ。

アルディピテクス・ラミダスは初期の人類の1種だが、木の上を二足歩行していた可能性がある。アルディピテクス・ラミダスの足の親指は、他の4本の指と離れており、足で枝を掴めたからだ。つまり、すべての手足で、枝を掴むことができたのだ。

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