メタバース(仮想空間)化するフェイスブックの「感覚代行」技術とは何か

仮想現実と拡張現実のその先へ向けて

転勤、転属、出向、あるいは転職や起業……長い職業人生には予想外の人事や重大な出来事などが次々と巻き起こっては去っていく。ビジネス・パーソンがこれらの激しい変化に適応するには、ときに心構えやワーク・スタイルを一から建て直し、新たな知識や技能などを次々と習得していかねばならない。

それを可能にしているのが「脳の可塑性」と呼ばれる特性だ。これは、脳が外界の刺激などによって変化を遂げる事である。脳が環境の変化に適応して柔軟に自身を変える能力とも言えるが、それはどの程度まで可能だろうか?

舌が目の代わりに物を見る

1960~80年代、米国の神経科学者ポール・バキリータ博士は脳の可塑性に注目して、これを極限まで追及する様々な実験を行った。彼の代表的な仕事の一つが「舌で物を見る実験」である。

バキリータ教授は若い頃に脳を損傷したことで視覚を失った男性患者のために、奇妙なリハビリ装置を開発した。それは小型ビデオカメラと小さくて薄い電導パネルを細いケーブルで接続したものだ。

ビデオカメラはヘッドバンドで視覚障碍者の額に装着される。そして彼は電導パネルを自らの舌に乗せるような形で使用する(映像1)。

映像1)額のビデオカメラで撮影した映像を電気信号に変換して舌に入力する実験
出典:https://www.youtube.com/watch?v=7s1VAVcM8s8

 

額のビデオカメラで撮影された目の前の映像は電気信号に変換され、視覚障碍者の舌に接触している電導パネルへと送信される。パネルには多数の電極が装備されており、これらが額の装置から送られてきた電気信号に反応して微弱な電気ショックを舌に与える。

こうした電気ショックは、元々カメラで撮影された映像に対応して、一種のパターンを形成する。これが舌を通じて脳の特定領域に伝えられると、(ある程度の訓練を経た後に)障碍者は額のカメラが撮影したトランプの数字やクラブ(三つ葉)などのシンボルを認識できるようになった(映像2)。

映像2)舌を通してトランプに印刷された数やシンボルなどを認識できる
出典:https://www.youtube.com/watch?v=7s1VAVcM8s8

つまり彼は、本来なら味や食感(舌触り)などに反応する舌を、一種の視覚器官として使えるようになったのだ。

見方を変えれば、本来なら舌を通じて味覚や触覚を処理するはずの脳の領域に、敢えて視覚情報を入力すると、その領域がこれに対応して視覚的な処理も行えるようになるということだ。これこそ「脳の可塑性」の為せる業だ。

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