日本テレビ系で毎週土曜日に放送中の中学受験ドラマ『二月の勝者―絶対合格の教室ー』(22時~)。最強最悪のスーパー塾講師・黒木蔵人を演じる柳楽優弥さんのインタビューを公開したところ、反響をいただいた。「課金ゲーム」「大学系列校」「鉄道オタク」「帰国生」「御三家」……。原作漫画やドラマに登場するエピソードを、リアルに体験した家庭に取材し、紹介してきた。

ドラマ6話では、女子たちの繊細な心が描かれた。地元の小学校で不登校のまるみちゃんは、不登校に理解のある私立中高一貫校を目指していたが、優しい先輩が通う一貫校に憧れを持つ。そして同じ学校を目指す「天才」の樹里ちゃんと友情をはぐくむ。
都市部では、このように学校の選択肢がある。よりよい環境を求めて一貫校を受験し、越境して通う子は少なくない。今回は、地方から東京の私立中高一貫校に通学した20代女性の物語。なぜ中学受験しようと思ったのか。往復4時間かけ、通いとおした6年間で得たこととは。Dさんに、「中学受験当事者に近い大人」として本音を伺った。

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校則が厳しく窮屈な地元から離れたい

東京近郊の県に住むDさんは、20代の大学院生だ。長引くコロナ禍にオンライン授業が増え、大学時代に東京で借りた部屋を引き払い、実家に戻った。対面の授業の際は、都内まで通う。インターンやアルバイトも、頑張っている。

Dさんは中学受験をして、第一志望だった東京都内にある私立中高一貫女子校に合格した。

「県外出身の母が、中学受験を体験していて、そういう選択肢があると知り、自分も受験したいと希望しました。小5の時、最寄り駅から数駅先にある受験塾に通い始めました。祖父が学校に迎えに来て、駅まで送ってくれて、電車は1人で乗りました。

週に4~5回、夜は9時、10時ぐらいまで塾です。仕事帰りの母が、迎えに来る日もありました。地方で受験塾に通うにも、理解のある環境と、『二月の勝者』で言われるような資金力が必要だと思います」

なぜ、地元の学校ではなくて、東京の私立一貫校を目指したのだろうか。

「一つ目の理由は、地元の公立中は、校則が厳しいと聞いていたことです。学童保育の年上の友達から、情報が入っていました。例えば、まゆをそったらだめって先輩から言われる。日焼け止めはNG、制服ではなくジャージで過ごしてそのまま帰らないといけないなど、いわゆるブラック校則がありました。

しかも、指定のジャージがダサかったんです。そういうことに従わなければならないのは、子供心にも『無理』と思いました」

『二月の勝者』で、まるみちゃんの母が「私立一貫校に入り、高校受験を回避したい」と話す場面がある。公立中ではテストはもちろん、実技科目、授業態度や部活等、あらゆるところで点数がつけられ、内申点が低いと高校受験に不利ということだ。リアル世界の保護者からも「公立中は、先生の主観で成績が決まるのでは」といったとまどいの声を聞く。

校則が厳しい地方の学校では、そうした傾向は強まるかもしれない。さらにDさんは、本音を話してくれた。

「東京の一貫校に進んだ二つ目の理由は、ずっと地元で生きるのは、つまらなそうだと思ったからです。地元で見てきた人たちは、ずっと地元にいて、地元から出ずに生きているようで、窮屈に感じました」

確かに、「地方と都市部で、教育格差があり、地方出身だと不利」と指摘する研究者もいる。筆者も、Dさんと時代は違うが、地方の公立校に通ったから、その閉塞感はわかる。自転車で通う公立中は荒れていたし、県の模試で上位になり名前が載ると、クラスで浮いてしまった。塾や習い事の選択肢も、少ない。図書館や商店街が遠く、「将来、こうなりたい」と目標にできるモデルもなかった。

今はネットによって情報は広がるようになったが、都市部の選択肢の多さ、リアルな情報の多さは地方から大学入学で都市部に出てきた多くの人がギャップを感じるとも言う Photo by iStock

その後、筆者が受験を経て入学した県立高はバリバリの進学校で、ついていけなくなり、周囲の女子がほとんど現役で大学に進む中、浪人した。東京の大学に行くと世界が広がり、「勉強もできるけど、部活やアルバイトも」と柔軟な同級生に出会い、驚いた。今は親として、選択肢があるなら、子供の感性に合う学校に進学させたい保護者の気持ちもわかる。