水の謎4 大きな表面張力
コップに水を満杯に入れると、水はコップのふちの高さよりもすこし盛り上がってもこぼれません。この力を表面張力といいます。じつは、水の表面張力は他の物質の液体に比べて、ずば抜けて大きいのです。
物質名/表面張力(10-3N/m)〈20度〉
- 水/72.75
- エタノール/22.55
- ベンゼン/28.9
- クロロホルム/27.2
- 酢酸/27.7
- 水銀/475

このように比べると、水の表面張力はエタノールの3倍以上、酢酸と比べても2.6倍になります。これは、水分子が水素結合の大きな力で引き合っているからです。
ちなみに、水銀は475と圧倒的な表面張力の大きさをしています。これは水銀原子が金属結合によって強い力で結ばれているからです。同様に、溶けた鉄や鉛も、大きな表面張力を持っています。
また水の大きな表面張力は、植物が水を土から吸収し、茎を通って葉は花に行き渡らせる上でも非常に有利です。それがなかったら、地球上にこんなにたくさんの植物は繁茂しなかったでしょう。
水の不思議
水には固体、液体、気体の3つの状態がありますが、液体だけで10以上の異なる構造が知られており、氷にも複数の構造があるとされています。つい最近も、超イオン氷という、木星や土星の内部のような高圧下で存在するとされる氷が実験室でレーザーを使ってつくられました。
水分子は、O原子を中心として、プラスに帯電したH原子とマイナスの電荷を持つ非共有電子対を頂点とした4面体構造をしていることから、水素結合で水分子が3次元的に結びつき、それが水特有の様々な性質を生んでいるのです。

地球の気候、海と大陸の関係、生命活動、それらはこの水の不思議な性質によって成り立っているのです。
水分子や水素結合について詳しく知りたい方は、こちらの書籍も参考にしてください。
著・平山 令明
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