ただいま成長中の小笠原・西之島へ上陸! 噴出したての岩石から見えてきた噴火活動の物語

食事も細心の注意で臨んだ貴重な体験

島はどのようにできるのか【第2回】

遠い南の海で起きた噴火により生じた軽石群が、太平洋沿岸につぎつぎと漂着し問題となっている。噴火を起こしたのは西之島から300 km南下した場所にある福徳岡ノ場。その給源付近には軽石や火山灰からなる新しい島がつくられた。

この福徳岡ノ場と西之島、どちらも浅い海で大量のマグマを噴出し、新島をつくったという点でよく似ている。しかし、西之島では溶岩によりつくられた新島が侵食に耐え続けているのに対し、溶岩が流出せず砕屑物でつくられた福徳岡ノ場の新島は、この3ヶ月の間にずいぶんと縮小し、いまにも失くなりそうな状態である。この違いは、島をつくるための糧として溶岩がいかに重要な役割を果たしているかを示す好例である。

前回の〈目のあたりにした火山島の誕生──西之島ができていくプロセスを目撃できる幸運〉(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87568)、西之島で起きた「新火山島の誕生」という稀有なできごとがいったいどのようにして起きているのかを理解しようと、さまざまな研究が進められていることをお伝えした。

今回は、西之島が溶岩流により成長し続ける傍ら、静穏期に行われた上陸調査によって見えた新島の姿に迫りたい。

困難でも上陸調査を行う意味

新島の調査として、航空機や衛星など遠隔からの観測は、西之島のようにアクセスが困難な場所で起きているできごとをいち早く知るための重要な手段である。

しかし、その解像度で捉えきれない情報を得たり、遠隔からの情報にもとづく仮説を検証したりするためには、現地に行くより他に術はない。西之島について言えば、上陸調査は究極の術といえ、研究者は噴火後に一刻も早い上陸調査の実現を切望した。

【地図】西之島の位置西之島の位置(拡大図の赤い星印)。軽石の漂着で問題になっている福徳岡ノ場(橙色の星印)は同じ小笠原諸島の南硫黄島付近である maps by Geospatial Information Authority of Japan

2013年以降の西之島の噴火活動

  • 【第1期】2013年11月~2015年12月(期間2年)
  • 【第2期】2017年4月~8月(期間4ヶ月)
  • 【第3期】2018年7月(期間約1週間)
  • 【第4期】2019年12月〜2020年8月(期間約9ヶ月)

噴火直後の西之島には、激しく波が打ちつける切り立った断崖や岩場が多く発達し、上陸できる場所はごく限られていた。しかし時間が経つにつれて、海に突き出た溶岩は侵食され、凹んだ湾状部では堆積作用により浜の形成が進み、海岸地形はしだいに滑らかになっていった。

旧島を含む西側には広大な砂礫浜がつくられ、上陸に格好の場所となった。このような場所ができたのだから、すぐに上陸できるだろうと思われるかもしれないが、じつは西之島には特有の事情があり、実現までにはさまざまな関門を通過しなければならない。

注目しているのは火山学者だけではない

西之島の科学的価値は、新たな火山島の地形地質やそれを生み出した噴火活動だけでなく、生物活動の場の創生という側面にもある。鳥、昆虫、植物などによりつくられる島の生態系は、2013年以降の噴火活動により甚大な影響を受けたはずであるが、それらが今どのような状態にあり、今後新しい隔絶された環境の中でどのように変化していくのだろうか。

新たな陸地の形成は、新たな生物活動のはじまりと密接に関係しているはずであり、西之島はそのような生物圏も含めた地球表層の営みを理解する上で極めて貴重な場所となっている。

【写真】2019年の噴火後の姿2019年の噴火後の西之島。新しい溶岩に覆われた photo by Japan Coast Guard

2019年からの噴火でわずかに残っていた旧島も新しい溶岩流に覆われてしまった現在、西之島は生態系としては始原的な状態にあると言える。火山学と生態学、一見無関係のようだが、西之島ではこれらの分野を跨いだ相互の理解と協力が重要になっている。

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