2021.11.28
# 介護

「義理の息子」からの暴力に苦しむ80歳女性…コロナ禍の介護で増える「高齢者虐待」の悲劇

河北 美紀 プロフィール

高齢者の変化、不自然さから虐待を発見した介護職員

不審に思った介護職員でしたが、その後デイサービスでの入浴時にNさんの体にもあざを見つけました。そして、Nさん本人に確認をしました。

「Nさん、そのあざは本当に転んだだけですか?」

するとNさんは、「同居する長女の夫に、繰り返し殴られている」と答えたのです。

 

Nさんの話によると、「寝たきりになられたら困る」という理由で、長女の夫に「毎日家の周りを40分以上歩く」「自宅で体操する」などの日課を課せられているということでした。それに対して、膝の痛みが強くてあまり歩けないこと、体調が悪いことを理由に断ると「怠けている、寝たきりになったらどうするんだ!」と言って、そこから暴言が始まり、エスカレートすると殴られると言いました。

コロナ禍になる以前は会社へ出勤し、平日はほどんど顔を合わせることがなかったNさんと長女の夫でしたが、コロナ禍になると会社への出勤が認められず在宅ワークが始まりました。同時に、Nさんは新型コロナウイルス感染防止のため1年近い引きこもり生活をつづけた結果、心身機能の低下が顕著にみられました。そのことから、常に自宅にいるようになった長女の夫の目は体力が落ちたNさんへ向き、威圧的なリハビリの指示や強要、そして虐待につながっていったようです。

Nさんが足を引きずりながら、家の周りをシルバーカーを押して歩いている場面を、ご近所さんが何度も目撃していました。時々心配そうにNさんに声をかけてくれることがあったそうですが、長女の夫からの指示だとは言えませんでした。

一方Nさんの長女は、母親が夫に暴力をふるわれていても、夫が怖いのか遠慮してか、一切関与をすることはなかったそうです。

デイサービスの介護職員は、このことを管轄の地域包括支援センターへ相談しました。これがきっかけで、ようやくNさんの自宅に地域包括支援センターの職員が訪問し、高齢者虐待があったのか事実確認をすることになりました。

地域包括支援センターの職員に対してNさん本人は何を語ったのか。その意外な顛末については後編〈「娘の夫」に虐待されても被害届は出せない…80歳女性とその家族が迎えた「意外な結末」 〉で詳述します。

SPONSORED