旅作家の歩りえこさんが、世界94カ国を旅していた頃に出会った人や現地の様子などを綴っているFRaUweb連載「世界94カ国で出会った男たち」。今回は、歩さんが国内外で度々被害に遭っている盗撮について。先日も日本の電車内で盗撮されたそうで、隠し撮りに気づいたときから犯人を警察に連行するまでの一部始終、そして、その件で思い出したブルガリアで出会った盗撮男とのエピソードを綴っていただきました。

スマホが不自然な角度で私に向けられている

最近、猛烈に憤りを感じた出来事があった。

仕事帰りで電車に乗っていたときのこと。疲れ切っていた私は座席に座りながらスマホでYouTubeの編集をしていた。大体いつも片耳だけイヤホンをして編集に夢中になっているのだが、妙な視線を感じて思わず顔を上げた。

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すると、斜め向かいに座っていたサラリーマン風男性のスマホが不自然な角度で私に向けられていることに気がついた。普通は正面を向いているはずなのに何かがおかしい。その瞬間、男性の背後にある窓に反射した画面が見えてギョッとした。

スマホを長年使っているからすぐ分かる。間違いなく私を映した動画を撮影している。スマホカメラが普及して便利になった時代とはいえ、ここ10年ほどの間でスマホでの盗撮被害に遭う女性が急激に増えたように思う。私もその1人だ。

イベントなどの仕事帰りにエスカレーターに乗っていたら、スカートの中にカメラを入れられて盗撮されたり、新宿を歩いていたらアダルトビデオを撮影している男性たちにいきなりカメラで撮られて最終的に胸元までカメラを向けられ怖い思いをしたり......。そのときはたまたま近くにいた私の所属事務所の社員さんに電話したらすぐ駆けつけてくれて、警察官の立ち会いのもとで動画を消してもらうことができた。

そんなことが度々あったが、この数年で最も多かったのは電車内で座っているときに、目の前に座っている男性にスマホで盗撮されることだ。大体窓ガラスに画面が反射して盗撮が起きていることを把握することができたが、その度に『注意するのは怖い。刺されたらどうしよう? もし証拠を押さえられなかったらどうしよう? 私ひとりで駅員さんの元まで連れて行くことはできないかもしれない』といつも諦めては泣き寝入りしていた。

そういったことがあまりに多いので、肌を極力隠すためのジャケットやジャージを持ち歩いている。仕事などで人に会うときは普通の服を着て、それ以外の行き帰りは着替えて対策をしていた。重い荷物を持ち歩いて着替える作業は手間がかかることだ。

後述するブルガリアにて。最も著名なブルガリア正教会のリラ修道院は世界遺産にも登録されている。写真提供/歩りえこ