警視庁組対4課元管理官の「マル暴刑事」が明かす暴力団捜査秘史

櫻井裕一氏 インタビュー
伊藤 博敏 プロフィール

「人として向き合う」

――トドメを刺そうと病院の集中治療室まで追い掛けて射殺する日医大事件は衝撃です。

命じたのは『平成の殺人鬼』と呼ばれた暴力団組長の矢野治。実行犯の真田光男(仮名※社会復帰しており、同書内でも同じ仮名)は、どうしても落とさなくてはならない相手でした。

――取り調べの前、真田の出身地に行き、思い出の場所を巡っています。

取調室では、まず人として向き合い、互いにわかり合う必要があります。まして真田は、服役中、懲罰房に44回もぶち込まれたような男です。乱暴というのでなく、筋が違うことが許せない昔気質のヤクザ者。取調室のなかでは、私が彼を見ていると同時に、彼も私の人間性を監察している。本気かつ本音で相対する必要がありました。

櫻井裕一氏
 

――「あんたが殺ったんだろ」と勝負に出て、真田が落ちた時、双方の目から涙がこぼれたシーンが印象に残ります。

殺しの取り調べに入って17日が経っていました。真田も覚悟を決めていたんでしょう。『変化球はいい、直球で来てくれ』と。ここが勝負の時と責め立てた。落ちたからには真田には長い懲役が待っている。そう彼の人生を思った時、私も涙したんです。

――その自供が、後に、暴力団員を含む6名に発砲、一般人3名が巻き添えで亡くなった前橋スナック乱射事件の解決に繫がります。

許されない事件です。警察庁、警視庁、各県警をあげての事件となり、合同捜査本部を置きました。私が対峙した真田の供述が、命じた矢野治の逮捕に行き着いた。矢野は死刑囚となりますが、獄中から週刊誌に殺人事件を告白。延命工作と見られましたが、その捜査が始まって、さらに世間を騒がせました。しかし、それも虚しく死刑が免れなくなり、20年1月、拘置所内で自殺しました。

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