「将来育休を取りたい」と思っていたのに…

「いい父親になりたかった」と言いながらDV加害者になってしまった池田さん。
DVの根底には、家父長的な価値観や性別役割分業意識、男女の不平等などがあり、対等ではない関係の中からDVは生まれてくると言われている。池田さんの理想の家族像はどのようなものだったのだろうか。聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

-AD-

池田さん: 高校生の時、選択授業があって「保育」を選択した40人のうち、男子生徒は私を含め6人だけ。自分が父親になったら育児休暇を取りたいと思っていたので、熱心に授業に取り組みました。保育園での実習があって、子どもたちと遊ぶだけなのですが、とても楽しかったことを覚えています。

また、子どもの頃は、新聞の家庭欄をよく読んでいました。そこには、選択的夫婦別姓制度を望んでいるのに、夫の姓を名乗らなければならない女性の苦しみが書かれていたりして、とても共感したのを覚えています。

父が婿養子で、何かと言うと「家」を持ち出す母の態度が嫌いでした。だからでしょうか「家」というものに嫌悪感がありましたし、家父長制なんてものは大嫌いでした。結婚して、妻は私の苗字になったんですが、妻には「申し訳ない」と謝りました。結婚披露宴でも〇〇家と書くのはやめました。家と家の結婚にはしたくなかったのです。

その一方で、デートの時には私がお金を出すべきだとか、自分がリードしなきゃいけないという意識が強くありました。男として「こうあるべき」というジェンダー規範に縛られている自分も確かにいました。家のローンが心理的に重くのしかかったり、仕事のストレスでイライラしたり、男らしくあることを負担に感じていたことも事実です。

自分は、結婚してどんな夫になりたいかというより、いい父親になることを楽みにしていいました。「結婚した当初、自分たちに子どもが授かれなくても、養子をもらいたい」と元妻に話したくらいです。「そんな簡単じゃないよ」と妻は本気にはしていませんでしたが……。信じてもらえないかもしれませんが、「子どもを叱らずに育てたい」と本気で思っていましたし、子どもに対して感情的に叱ったことはありません。

結婚した当初は「いい父親」になることを望んでいたという。photo/iStock

現在、子どもは元妻の下で暮らし、池田さんは月1回だけ子どもと会うことが許されている。ここで、「どんな父親になりたかったですか?」と聞くと、池田さんは声を詰まらせ、涙声になった。数分の沈黙の後「子どもが安心して育つ家庭を心底望みながらも、全てを失ってしまいました。子どもの成長に関わっていけないのが、本当につらい。妻にDV をしてしまったことと同じくらい、取り返しのつかないことをしてしまった」と語った。

最終回の第3回では、DV加害者は変われるのか。DV加害者プログラムを受けている現在の池田さんに、離婚後の心境とこれからについて聞いていく。

次回の記事『怒鳴らずに生きていけるようになったDV加害者が「生まれ変わった」と言える理由』は、11月25日6時公開予定です。