妻の機嫌を損ねることに耐えられない自分

子どもの目の前で夫婦が喧嘩をすることは面前DVとも言われる。また心無い言葉で子どもの心を傷つけるのは心理的虐待に当たる。幼少期にそうした機能不全家庭で過ごすことで、子どもは心が深く傷つき、心理的に不安定なまま成長していく。適切な人間関係を築けないなどの問題が生じ、生きづらさにつながっていくとも言われている。池田さん自身は、どう感じているのだろうか。

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池田さん:両親は、家では外の人には見せない別の顔があるように感じていました。でも、そういうものだとも思っていました。家出や死ぬことも考えましたが、怖くて実行することはありませんでした。

中学ぐらいから、だんだん友達との関係が難しく感じるようになりました。どうしてか1対1の親密な関係性の方が安心できました。いじめられていたわけではありませんが、人の輪に入っていくのが怖くなり、高校一年生の1学期には、クラスのどのグループにも属せず、お弁当を一人で食べていました。

私には、細かいことに執着してしまう癖があります。思い通りに物事が進まないと、自分をダメな人間だと思い殻に閉じこもることがしばしばありました。電車に乗り遅れた時、次の電車を待てばいいのですが、自分がどうにも情けなく思えてきて「ダメな人間だ」と落ち込んで打ちのめされます。自己評価が低かったのは、育ちと関係があるのでしょうか。

一方で、子どもの頃は警察官に憧れていました。好きなテレビ番組が水戸黄門で、黄門様の「この紋どころが目に入らぬか」という決め台詞が大好きでした。

子どもの頃は、警察官に憧れていた。photo/iStock

第1回目の記事でも話したように、元妻と激しい喧嘩になり、妻から「あなたは間違っている」と言われた時の自分は、両親から責め立てられていた子どもの自分と重なりました。

自分は夫として父親として、いい人間でいたい。自分を良く見せたいという思いが、とても強かったんだと思います。だから、少しでも否定されると過剰に反応してしまう。妻と意見が違うことに我慢ならなくて「なんで僕を否定するんだ」という怒りに変わってしまう。「正しいのは自分だ」と、虚勢を張っていたんだと思います。

職場ではやらないことを、なぜ家族にはするのかと言われれば、その通り矛盾しています。不満があっても、これが上司や同僚なら怒りをぶつけたりはしません。家族以外の人との関係性は、家庭以外の場で付き合い方を学んできたと思うんです。でも、妻に対しては、家族なんだから不満をぶつけてもいいし、それを許してくれるだろうという「甘え」がありました。振り返ると、苦しくて悔やんでも悔やみきれません。