2021.12.03
# 本

篠原悠希×田中芳樹が明かす「歴史ファンタジー小説ならではの悩み」

何を書いて、何を書かないか
『霊獣紀』の著者でファンタジー小説界の新星・篠原悠希と、『銀河英雄伝説』『アルスラーン戦記』で知られるカリスマ・田中芳樹。初対面ながらもすでに師弟の絆を感じさせる二人の対談前編では、ファンタジー小説“沼”の奥深さについて熱く語り合った。後編では、歴史小説を書くことの難しさについて、細谷正充(文芸評論家)を交えながら、お届けする。
左から田中芳樹さん、篠原悠希さん、細谷正充さん

翻訳サイトの活用

細谷 篠原さんは、中国語の資料をどうしていますか。

篠原 友人の妹さんが北京に留学しておられて、旦那さんが中国人なので、ここの意味って聞くと教えてくれるんですね。『晋書』なんかは、取りあえず中文Wikiに全文が載っている。そこで漢文で読み下せるところは何とか自分で頑張って、分からないとネットの翻訳にかけたりしています。日本語訳はめちゃくちゃなんですけど、英語にするとまだ意味が通じるんです。それでも分からないと中国語の読めるお友達に、分かりませんって泣きつくんです。そんな感じですごい時間がかかりました。

あるとき幸運にもネットに『晋書』の和訳を載せたサイトを見つけまして、答え合わせ的な感じで読んでいきました。『魏書』や『十六国春秋』からもどんどん情報を入れている翻訳サイトも昔はあったんですけど、(執筆に取りかかったころには)消えてしまったんですね。プリントアウトしたのしか残ってなくて、その内容や逸話には出典が分からないものがいっぱいあるんです。

訳者の創作ではないという確認のために、『魏書』も取り寄せたんですが、『魏書』のほうが『晋書』よりもダイジェストでした。『十六国春秋』に至ってはデータすら中国Wikiに載ってないので、何が書いてあるのか謎に包まれたままなんです。だからネットにあった邦訳版で『晋書』に書かれていない逸話とか記録は、一体どこからきたものなんだろうという感じです。

 

田中 そういうの、ありますね。(持ってきた本を手に取り)一応、中国で『三国志』の続編として出されたやつの日本語訳が、多分、これ以外にないんですけども、読んでいくとここが違う、ここも違うという感じで。それで、石虎が石季龍という字(あざな)で、割と最初から出てきて、いい役をやっているんです。主役は劉淵です。

篠原 そうなんですか。

田中 『三国演義』の続編ということで、劉備の孫かなんかが匈奴に逃げ延びて、そこで育って、晋を討って敵を討つという。

篠原 まるで義経がチンギス・カンになったような。なんでもありですね。

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