大団円、とはいかなかった「その先」の居場所探し

入所後はときおり訪問して様子を見るという生活になるハズで、本当ならこれで、義母の介護話は一応おしまいになるハズだった。夢にまで見た、何にも縛られず朝まで熟睡できる日々の始まり…。

ところが、2021年に入って驚きの事実が発覚したのだ。
今年4月、介護報酬改定が行われた。私たちは、日々の生活に追われて何が変わったのか知らなかった。ある日ケアマネジャーから突然連絡があり、義母にかかる費用が値上がりすると言われた。月にして4〜5万円ほど上がってしまうという。とんでもない値上がりに困惑した。残念ながら、義母の年金(遺族年金を含む)ではまかないきれない金額になってしまったからだ。義母の場合、ベーシックな居住の費用のみならず、高血圧の治療、帯状疱疹後疼痛や虫歯治療など医療費もかかってしまう。

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値上がるのはどの部分なのか、介護報酬の計算は複雑で素人にはすぐに飲み込めなかった。ケアマネジャーも「私も急に知らされたので、戸惑っているんですが」と前置きして、説明をしてくれた。義母は、高齢者住宅に居住しながらデイサービスに「通って」いる。このデイサービスには、実際に送迎つきで通っているお年寄りもいる。それが「不公平だ」と判断され、この分の補助が切られてしまったのだという。その他にも、居住サービスに要する費用の額の算定について改定が行われているから、おそらくほかにも値上がった部分があるのだろう。「しかし、とにかく、一番最初の値上げターゲットは『高齢者住宅』の利用者です」とケアマネジャーは口惜しさをにじませていった。

値上がりしてからしばらくの間、義母の状態はそこそこ安定しており、介護度が変わることはなさそうだった。この分だと、当分は家族が補填しつづけるしかないかとため息をついていた。

それが、この記事を書いている最中に動きがあった。義母の様子が変わってきたのだ。歩行中に転倒が相次ぎ、どういうわけか夜中に廊下へ出るのを恐れて、室内のゴミ箱で小用を足してしまったらしい。ケアマネジャーから、これはもしかすると区分変更したほうがいいかもしれない、と提案された。

もし申請が通れば、義母は要介護3。特別養護老人ホームに入る条件が満たされることになる。この後コロナ禍がある程度落ち着いて、良い施設に入所できたら、義母本人にとっても私たちにとっても、本当に心安らかな時間が始まるだろう。

特殊な性質をもった義母は、たくさんの人を傷つけてきたし、自分自身も人から疎まれる人生を恨んできたに違いない。彼女のような人と良好な関係を築くためには、適度な距離と仲立ちする第三者が必要だ。彼女がもし、子ども時代から周囲の理解や適切な導きに恵まれていたら、愛される喜びを知り、感謝に満ちた時間を過ごせたかもしれない。今度彼女と会うときには「あなたと出会わなければ知らなかったことが、たくさんあった」と伝えよう。

すべての認知症患者のみなさん、介護者のみなさんが、穏やかで実り多い、幸せな日々を送ることができますように。

【「謎義母と私」了】

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